循環社会に向けて変わるビジネス

第1回会員企業の会 概要

●日時
平成12年10月13日(金)
●場所
東京都南部労政会館
●内容
話題提供1
循環社会に向けて企業に求められているもの

 加藤三郎(環境文明21代表理事)
話題提供2
企業の環境リスク・マネジメント

 荒井直樹さん(イー・アール・エム・ジャパン(株)取締役調査部長)
話題提供3
欧州における企業とNGOのパートナーシップ

 レーナ・リンダルさん(スウェーデン環境ニュース発行人)
パネルディスカッション
循環社会に向けて変わるビジネス

<パネラー>
 宇郷良介さん(日本電気(株)環境企画推進センター)
 大道寺秀一さん(日刊工業新聞社 企業情報センター)
 高橋房雄さん((株)高特 代表取締役)
 加藤三郎(環境文明21 代表理事)
<コーディネーター>
 藤村コノヱ(環境文明21 専務理事)

報告

10月13日午後、東京都南部労政会館(品川区)にて、「第1回 環境文明21会員企業の集い」を開催した。会員企業から約40名が参加し、「循環社会に向けて変わるビジネス」をテーマに、活発な意見交換が行われた。その模様を報告する。


話題提供1 循環社会に向けて企業に求められているもの
加藤三郎(環境文明21代表理事)

「循環型社会形成推進基本法」と関連する法律が成立し、一応、物質循環を促進する法体系ができた。完璧とは言えないが、国民の期待に大筋において応えうるものであると考える。しかし、「循環社会」の形成に向けて取り組むべき課題は、廃棄物やリサイクルなど物質循環の分野に限らない。このほかにも、エネルギー、食糧・農業、交通など主要な課題がある。

循環社会に向けて、企業の果たすべき役割は大きい。事業者の責務の拡大にともない、法令等の遵守はもとより、省エネ・省資源、環境にやさしい製品の開発・製造・販売など、環境負荷の低減に向けた取り組みが、益々求められている。これらに加えて、今後は、環境報告書の発行、環境会計の公表など利害関係者との積極的な環境コミュニケ-ションが重要になる。

グリーン購入法は、原則的に国の機関を対象としており、民間企業に対してはグリーン購入の実施を呼びかけるにとどまっている。リサイクル・再生品の受け皿の整備という観点から、民間企業においても積極的に推進してほしい。

このほかにも、企業とNGO等とのパートナーシップ、経営陣から社員に至るまでの環境学習・研修、各種の社会貢献などが、企業に求められている。なかでも、企業とNGO等とのパートナーシップについては、NGOや市民の視点を企業経営に積極的に取り入れるものとして大いに期待したい。

話題提供2 企業の環境リスク・マネジメント
荒井直樹さん(イー・アール・エム日本(株)取締役調査部長)

荒井直樹

M&Aに際して買い主は、不測の追加投資のリスクが内在していないかどうか、細心の注意を払う。環境デューデリジェンス(Due Diligence)とは、環境的な側面でのリスクを定量化して、投資額に反映させるための一連のサービスのこと。具体的には、オゾン層破壊物質、PCB、アスベスト、廃棄物処理、土壌地下水汚染など、環境負荷項目に沿って監査し、浮かび上がったリスクを潜在的な出費の要因として金銭表示したレポートをとりまとめ、M&Aに際しての判断材料のひとつとして提供するものである。

ISO14001は具体的な環境対策への取り組みを対外的に表明する手段であり、日本企業の取得件数は、世界でもトップクラスにある。ところが、ISO14001の認証取得企業であっても、「環境デューデリ」の監査を入れると、環境リスクによる潜在的な出費の要因があるというケースは珍しくない。特に土壌汚染の問題は深刻な状態にある。法規制さえクリアーしていれば、それでことすむという時代はとうに過ぎている。自治体では、行政指導という形で、法規制以上の取り組みを働きかけるケースが増えている。また、M&Aなどのように民間同士の取引においては、法規制だけが、買い主などからの圧力の基準となるわけではない。

このほか、何か起きた時の対処の仕方、つまりリスク・コミュニケーションが、結果を大きく左右するというのは、環境問題においても同じである。パフォーマンスそのものに加えて、コミュニケーションの面でも配慮が必要な時代になってきている。

話題提供3 欧州における企業とNGOのパートナーシップ
レーナ・リンダルさん(スウェーデン環境ニュース発行人)

レーナ・リンダル

日本と同じく欧州でも、企業に対する市民の声は、無視されてきた。しかし、市民のボイコット・キャンペーンなどの被害を受けてから、企業は、積極的な取り組みに転じるようになり、様々な形でNGOとのパートナーシップを組むようになった。今では、市民が厳しい注文をつけることが逆に、良い製品をつくるきっかけとなって、企業を強くしている。また、環境対策に取り組む企業が、会社の方針に社員がついて来られるようにと、NGOとの対等なパートナーシップにより、社員の環境教育に乗り出したという事例もある。  日本のメディアは、世論づくりが上手くないし、企業を批判してはいけないという風潮さえあるように思う。欧州では、環境保護団体の会員数が多いこともあり、環境問題はメディアでも大きく取り上げられる。例えば、シェル石油が、古くなった石油採掘プラットホームを海洋投棄しようとした時のこと。グリーンピースの呼びかけで、大規模なボイコット運動へと発展するなか、メディアは、ドイツ首相の「自分の公用車ではシェルのオイルを使用しない」という発言を大々的に報じるなど、世論づくりに一役買った。その結果、シェルは、プラットホームの海洋投棄を断念した。その後、シェルは方針を大きく変え、自然エネルギーの利用に力を入れるようになった。さらに興味深いことに、その分野において、グリーンピースとパートナーシップを組むようになったのである。

日本では、エコ商品をつくっても誰も買ってくれないという話をよく聞く。グリーンな消費者を育てるには、環境保護団体など市民が信用する団体や人による環境教育が必要だ。企業は、条件を付けずにそうした場を積極的に提供してほしい。


会場様子

パネルディスカッション
循環社会に向けて変わるビジネス

パネラーのほか、会場の参加者の皆さんからの発言を交えながら、活発な意見交換が行われた。以下、主な意見を紹介する。

●循環社会に向けて

●企業とNGOとのパートナーシップ

●環境文明21に望むこと