クルマ社会を変えよう ―地球温暖化防止のために―

ミニ・ワークショップの概要

●日時
平成13年6月23日(土)
●場所
東京都南部労政会館
●内容
話題提供1
自家用乗用車からのCO2排出量の削減策について

 湯川憲一さん(環境文明21制度部会メンバー)
話題提供2
公共交通の整備 -武蔵野市のムーバスの挑戦-

 中村哲朗さん(環境文明21制度部会メンバー)
話題提供3
持続可能な環境保全型交通を目指して -OECD報告に学ぶ-

 柳下正治さん(環境文明21会員、名古屋大学教授)
パネルディスカッション
クルマ社会を変えよう―地球温暖化防止のために―
=パネリスト=
 レーナ・リンダルさん(スウェーデン環境ニュース)
 太田勝敏さん(東京大学教授)
 増原直樹さん(環境自治体会議)
=コーディネータ=
 加藤三郎(環境文明21代表)

報告

去る6月23日、東京都南部労政会館(品川区)にて開催したミニ・ワークショップは、会場の定員を上回る参加者で賑わった。前半は制度部会の湯川憲一さん、中村哲朗さん、柳下正治さんによる話題提供(会報4、5月号参照)、後半はパネルディスカッションで盛り上がった。ここではパネリストの発言を中心に紹介する。


●太田勝敏さん(東京大学大学院教授)

低公害車や低燃費車の普及、つまり単体改善が技術として最も確立しておりコストも安いが、それだけでは温暖化防止は間に合わない。技術要素の組合わせや普及させる仕組みが重要。また、環境家計簿と同じように交通家計簿のような自己点検のためのツールが必要だろう。カリフォルニアでは、事業所に従業員の通勤計画を提出させ、平均乗車人員という指標を用いてマイカーの一人乗り通勤を減らそうとした。英国でも同様に、グリーン交通プランとしてマイカー通勤に対する代替手段、相乗りバスの提供や自転車通勤者に対する手当てなどを提案している。カーシェアリングは、使用者に時間と距離、費用が分かる形で請求されることで、クルマの利用を考え直す契機になる。

●増原直樹さん(環境自治体会議事務局)

環境自治体会議は自転車を活用したまちづくりに取り組んでいる。茨城県古河市では電気自転車の共同利用を実験中。また、自転車道路のネットワーク化を進めている。秋田県二ツ井町では、自転車利用を進めるため、スタンプラリーやサイクリングなどのイベントを盛り上げ、観光客向けに乗り捨て自由なレンタサイクルも用意した。練馬区では総合計画のなかでまちづくりと自転車利用の計画を両立させている。

国レベルの政策提言と同時に、地域の条件に合った具体的な政策メニューも提案していくことで交通分野での温暖化防止施策が進むだろう。

●レーナ・リンダルさん(スウェーデン環境ニュース)

スウェーデンでは、自治体が推進しているエコドライブ講座と自転車通勤の奨励が成功している。行政は自転車道を整備し、企業は自転車通勤者に対する職場でのシャワー提供や公共交通のチケット提供をしている。環境問題よりは家計の負担を減らすことや健康志向から参加者が増えてきた。政府は、クルマを減らすことよりも代替燃料を考えている。小麦からつくったエタノールをガソリンに5%混ぜることで化石燃料の使用を減らせる。 

日本に来て驚いたのは、非常に狭い道でもクルマが侵入してくることだ。クルマの乗り入れをもっと厳しくするべきだろう。ストックホルムで新しく住宅建設を始めた地域は、わざわざ人口密度の高い町、クルマという交通手段を必要としない町を作ろうとしている。もともと人口密度の高い日本では、公共交通に乗換えがしやすいから、狭い道にむりやりクルマを通すようなことはしなくていいのではないか。


参加者との意見交換では、持続可能な交通へのシナリオ、貨物鉄道の利用や共同輸配送の強化、自動車の排熱によるヒートアイランド効果、都市と地方での公共交通の優位性の違い、外環道路の整備によるメリットとデメリットなどをめぐって活発な議論がなされた。