地球温暖化とビジネス~元気の出る環境経営~

ミニ・ワークショップの概要

●日時
平成13年7月9日(月)
●場所
東京都南部労政会館
●内容
話題提供1
温暖化対策と期待される企業の対応

 森田恒幸さん(国立環境研究所)
話題提供2
これからの環境経営~サステナブル経営時代の到来~

 瀧澤信さん(株式会社グッドバンカー)
パネルディスカッション
地球温暖化とビジネス~元気の出る環境経営~

報告

7月9日午後に開催した「会員企業の集い」は、会員企業から約50名の参加者を得た。前半は森田恒幸さん、瀧澤信さんの話題提供、後半はパネルディスカッションで大いに盛り上がった。ここでは、話題提供者のお話を中心に紹介する。


話題提供1 温暖化対策と期待される企業の対応
森田恒幸さん(国立環境研究所)

森田恒幸

経済発展と地球温暖化対策の両立は、現在、研究の最先端課題でもある。日本の公害対策の歴史を見ると、非常に厳しい公害規制を導入した時、競争的なマーケットが技術革新や普及を進展させて、国内に環境産業が増大し、GDPの増加要因ともなった。公害対策を導入する企業にとってはコストだが、それを提供する産業にとっては、有効な需要が増えるということでもある。 地球温暖化対策においては、技術の役割が非常に大きい。ハイブリッドカー、燃料電池等、温室効果ガスの排出削減のための技術開発は、早いテンポで進んでいる。環境の制約が長期的に強まることに対して、マーケットが早めに対応しているからだろう。我々が十分に対応できるコストで賄える技術が多く、むしろ便益を生じる技術もたくさんある。温室効果ガスの削減効果と地域の活性化を上手く結びつけるシナリオを書くことが、まさに今、求められている。長期的には、バイオマスやソーラーの積極的な利用が不可欠となる。

化石燃料依存型の高成長社会では、温暖化対策に常に2~4%のコストを必要とする。そうした社会では、このほかにもエコシステムを改善する費用が生じることとなり、環境対策のために、稼いだものの半分ぐらいを使うことになる。それに比べて、循環社会という社会構造にして最初から効率的な技術に投資していくと、温暖化対策とほとんど変わらないコストで、むしろ経済が発展するシナリオが十分に描ける。IPCCでは、狭い意味での温暖化対策オプションの検討だけでなく、他の社会経済対策との統合、さらには将来の発展のあり方もあわせて検討する必要があると述べている。

話題提供2 これからの環境経営 ~サステナブル経営時代の到来~
瀧澤信さん(株式会社グッドバンカー)

瀧澤信

SRIとは、Socially Responsible Investmentの略で、社会的責任投資のこと。米国で禁酒法時代、自分たちの道徳に反する企業に投資したくないというクリスチャンの投資家たちが、悪徳企業を排除した投資ファンドをつくったのが、SRIの始まりという説がある。現在、欧米には、エコファンドをはじめ、女性ファンド、ソーシャルファンド、倫理ファンドなど、それぞれのお国柄を反映したさまざまなSRIファンドがある。

今まで米国流の経営論は、いかに収益を極大化するかというところに集約されていた。ウォール街では四半期に1回の決算報告がブームになるなど、異常に短期的な収益を目指すスタイルとなっている。そうした経営論で株主や銀行は投資するため、経営者も短期的な収益を無視できなかった。

最近は、環境や社会的責任等のサステナビリティ(持続可能性)の概念を無視できない世の中になってきている。金融の立場から、サステナブルな経営をしないと融資はしませんよ、株主になりませんよということになれば、産業界もイノベーティブな投資ができる。欧州には、社会的価値観に基づいて文化芸術等に投資する銀行や、エコ企業のみに融資する銀行が登場している。

元々、日本企業の多くが、単なる短期的収益だけを追った経営ではなく、社会との共存を強く意識して成長してきたのではないか。サステナビリティこそがグローバルスタンダードになろうとしている今、日本企業がそれを受け入れられないはずはない。


会場様子

話題提供をうけて、後半は「地球温暖化とビジネス~元気の出る環境経営~」をテーマにパネルディスカッションを行った。金子正平さん(カネコ工業)、正田剛さん(日本自然エネルギー)、杉本秀夫さん(東京ガス)、森田恒幸さん(国立環境研究所)、藤村コノヱ(当会専務理事)をパネラーに迎えて、加藤三郎(当会代表理事)の進行により、活発な意見交換が行われた。