10周年記念シンポジウム
環境教育推進法の成立と今後について
シンポジウムの概要
- ●日時
- 平成15年9月26日(金)
- ●場所
- 東京都南部労政会館
- ●内容
- 1.開会・挨拶
加藤三郎(環境文明21代表理事)
2.環境教育推進法の成立の経緯
藤村コノヱ(環境文明21専務理事)
3.環境教育推進法の内容
小林光(環境省 大臣官房審議官)
4.パネルディスカッション
「持続可能な社会に向けた環境教育とは」
パネリスト(五十音順):
川本義勝さん((株)カンサイ社長)
木俣美樹男さん(東京学芸大学環境教育実践施設 教授)
許斐喜久子さん(NPO法人エコパートナー21)
味木美隆さん(環境経営コンサルティング研究所)
村杉幸子さん(日本自然保護協会)
コーディネーター:藤村コノヱ(環境文明21専務理事)
報告
9月26日午後、当会主催のシンポジウム「環境教育推進法の成立と今後について」が開催された。加藤三郎当会代表による開会挨拶の後、藤村コノヱ当会専務理事、小林光環境省大臣官房審議官の環境教育推進法についての講演が行われた。パネルディスカッションでは、5名のパネリストを迎えて活発な意見交換が行われた。
<開会・挨拶>加藤三郎
<環境教育推進法成立の経緯>藤村コノヱ
(略)
日本を持続可能な社会にするために、すべてのベースにあるのが環境教育だと思う。今後の課題は、単に環境について学ぶだけでなく、人間社会的視点、経済的視点も取り入れ、真に役立つ環境教育の中身を充実させ、より良い環境教育推進法へと育てていくことである。
<環境教育推進法の内容>小林光
各界各層の自発的な環境保全活動が必要であり、環境保全を担う人づくりを進める気運の高まりなどが環境教育推進法ができた背景である。本法律は、一般的な法律がルール違反に対する取り締まりを目的としているのに対して、社会の仕組みや枠組みをルールとして定めるということに力点を置いた珍しい法律である。
(中略)
世界的に見ても国レベルでの環境教育に関する法律というのは珍しく、今後この法律をもとに、より充実した環境教育を展開して頂きたい。
<パネルディスカッション>「持続可能な社会に向けた環境教育とは」
パネリスト:
川本義勝 ((株)カンサイ 社長)
木俣美樹男 (東京学芸大学 環境教育実践施設 教授)
許斐喜久子 (NPO法人エコパートナー21)
味木美隆(環境経営コンサルティング研究所)
コーディネーター:
藤村コノヱ (環境文明21 専務理事)
- 藤村:
- まず最初に自己紹介も含め、お話いただきたい。
- 木俣:
- 民族植物学の研究をしている。食料の安保が兵器の安保よりずっと軽視されている今、地域に即した伝統文化の知恵の見直しが行われなければ、悲惨な状態に陥るだろう。雑穀類は、今日本にはほとんどないが、戦時中には多くの人の命を救い、また今も途上国の人たちの主食である。こういった祖先の伝統文化が、環境学の基礎となるのではないか。
- 村杉:
- 高校、中学の生物の教師をしていた。30年ほど前、どんどん日本が壊れていく状況に直面し、なんとかしたいという思いを持っていた。今は退職し、環境関係のNGOの理事や地球観測セミナーなどをしている。
- 許斐:
- 子供たち相手の環境教育をしている。最近は、子供も親も受験勉強で、子ども会をやめてしまう方が多いが、野菜づくりなどの自然体験の場を提供する活動をしている。問題は場の提供がないことで、最近は学校もなかなか場所を貸してくれない。地域にとっての発展となるような活動、環境教育の実施もしているが、資金的な問題が大きい。
- 味木:
- 環境問題に興味をもったのは、母は水俣市生まれで、私自身も、水島、四日市市、川崎などへ出張し、また、倉敷で生まれた長男が慢性の喘息になったこともひとつである。現在は、ISO指導などを通した中小企業の活性化、 民間企業の経営の仕方を行政に取り入れることによる地方自治体の活性化、キッズISOの指導などを通した市民・住民・家庭の環境教育などをしている。
- 川本:
- し尿処理場や下水処理場の補修、機械の整備などのセールス、現場などをやっている。25年前、環境を学ぶためヨーロッパを訪れたとき、意外にも環境の状況はよくないことを知った。そういったことからこのビジネスを始めたが、なかなか売れないことがこの市場の問題。これからは、廃棄物の処理だけではなく、環境技術事業をやっていくつもりである。
① 法が成立したために現場でやり易くなった面は?
- 多くの自治体が本法成立を未だ知らないのが現状。(藤村)
- 奈良県の環境アドバイザーをしているが、環境省の管轄なので、学校に行こうとしても、管轄が違う(文科省の管轄)ので行けない。この法律の制定によって、よくなるのではないか。(許斐)
- 法をたてに要望をし易くはなったが、法が成立したからといって、教育委員会が積極的に環境教育を進めていくわけではない。また、学校においても環境教育は義務だ、と言えるようになった点で、進めやすくなったが、実際は、大多数が法律の存在さえ知らない。(村杉)
- 環境問題は未だ多くの人にとって人事であるが、その緊急性・重要性を社会に拡げていくことが、本法律成立のよって出来るようになったのでは。また、教育研究機関も、もっと積極的に環境教育に取り組まなければならない、というきっかけになるのではないか。(木俣)
- 本法律は、5つの主務大臣が関っており、従って、縦割り行政の弊害が少なくなり、今後の行政が、多方面な横のつながりのあるものとなっていくのではないか。また、今までになかったものが出来た、というのも一つのメリットではないか。(味木)
- ISOをとるモチベーションになるのでは。頑張っている会社の認定をすることが出来る。環境税の導入の促進力になるのではないか。(川本)
② どういった項目を案に盛り込んでいくべきか?
- 専門知識を持った人(専門官)が行政に関るべき。(藤村)
- 環境教育の研究機関の充実。必要最低限のものしかない、子供の遊び場所(原っぱなど)の提供。(木俣)
- 「環境教育基本計画」がほとんどの人に知られてないように、この法律も、成立はしたが人々に知られていない、ということがないようにしなければならない。また、確かに5つの主務大臣が関っており、縦割り行政の解消になるのかもしれないが、単なる寄せ集めではだめなので、委員会を設置するべきではないか。(村杉)
- 大人に対する環境教育を義務にすべきではないか。(許斐)
- 野菜が実際に畑になっていることを見せる、など子供に自然体験をさせる。また、そういった体験の場をつくるために、民間だけでなく公共の施設を借りることができるようにするべき。会社で学んだ環境方針・活動を、家庭に持ち込むこと。(味木)
(以下、会場から)
- 本法律が、実効性があるものにするには、普及啓発(タウンミーティングなど)や広報活動(環境省記者クラブなど)に取り組まなければならない。
- 盛り込むべき項目ができるだけ多くの人の意見を反映するよう、そういった項目を決める手続きが重要である。
- 環境教育が、保育園、幼稚園でも行われるようにしなければいけない。
③ どういう分野で環境教育に取り組む予定か?
- アートの要素などを盛り込んだ農業などの実施体験。(川本)
- ネイチャースクールを開催し、地域の町づくりに取り組む。(味木)
- 子供たちに美しい自然に触れさせる、など実際に自然を体験させる。(許斐)
- 自然と供に暮らしていた過去の生活・感覚を呼び覚ますような、感性の教育。(村杉)
- 環境教育・生涯学習の体系づくり。実技も含めた伝統の継承。(木俣)
- 環境教育のカリキュラムづくり(藤村)