東日本大震災からの復興に関する提言
平成23年5月23日
環境文明21
東日本地域では、今回の震災以前から既に人口減少、過疎化、高齢化等の人口構造の大変化が進行していたが、今回の震災・原発事故はその傾向を一層加速化させると思われる。
しかし今回の災害・事故を機に、豊かな自然環境の中で人々が絆を深め、助け合って生きられるコンパクトで安全なコミュニティを各地区に形成し、かつて宮沢賢治が夢みた“イーハトーブ”をいまこそ建設し、本当の豊かさや幸福を実現できる持続可能な暮らしを実現することを目指す。このことは、温暖化への適応策にも直接役立つものである。
具体的には、東日本地域を食と持続可能な自然エネルギーの一大生産基地とする。
そのためには、農林水産業の復活に対する強力な支援と、そこに従事する人材の養成を政策的に実施する。また必要に応じ、「特区」制度も活用する。
エネルギー政策については、従来の原子力優先から東日本に豊富に存在する各種の再生可能な自然エネルギー資源(太陽光・熱、風力、バイオマス、地熱、水力、波・汐力等)の活用強化に政策を転換し、実施できるようセンター(仮称:東日本自然エネルギー開発利用センター)を直ちに官と民(企業、NPO、市民など)で立ち上げる。なお、この施策は、温暖化対策にも資するものである。
1.復興・再生の方向性
- 復興にあたっては、全ての市民の命と社会経済活動の源である「環境」を大切にし、今生きる人だけでなく将来世代の声も反映されるよう、国と地方の役割を明確にした上で、必要ならば「特区」制度などを活用して、被災地域が主体的に動ける体制とすること。
- 当地域は、震災以前から人口減少、過疎化・高齢化の著しい地域ではあるが、ささやかでも、安心・安全な生活が確保され、人々との絆や信頼を基礎とした暮らし、自然の中で本当の豊かさや幸福が実感できる暮らしが残されていた地域であることから、こうした暮らし(かつて宮沢賢治が「イーハトーブ」として夢みたもの)の再現を目指すこと。
- 東日本の自然資源を活用し、地域特性を活かしつつ、他地域との連携も図り、地震・津波等の自然災害だけでなく、地球温暖化にも適応できる地域づくりを進めること。
- 東日本地域を食と各種再生可能エネルギーの一大生産基地とすること。
2.主要な個別政策
1)エネルギー政策
- ①国は、原子力最優先のエネルギー政策を抜本的に改め、安心・安全な再生可能エネルギー重視への早期転換を図ることを新「エネルギー基本計画」の中に明記し東北地方をその一大モデル基地とすること。
- ②再生可能エネルギーの利用促進
- 地域の自然環境を活かした各種再生可能エネルギーへの開発・利用を拡大するための(仮称)「東日本自然エネルギー開発利用センター」を官と民(企業、NPO、市民など)の連携で早急に設立する
- ③エネルギー政策の形成にあたっては、国及び自治体は、多くの市民・NPOの参加のもとに、民主的な方法で形成すること。
- ④現行のエネルギー供給システムを見直し、発送電分離の方針を新エネルギー基本計画の中で確立し、それを計画的に実施するとともに、多様な再生可能エネルギー源を活用できるようスマートグリット化の推進を進めるなど、集中と地域分散化を並行してすすめること。
2)まちづくり
(1)人口の減少や高齢化に配慮し、安全で快適な居住機能が維持できる適正規模の街づくりを目指す
- ①それぞれの町にあったコンパクト化を安全な場所で推進
- 計画策定段階から市民・NPOとの協働を進める
- コンパクトシティに適応する地域での技術開発を支援する(ローカル技術の支援)
- ②建築基準法、都市計画法、国土利用計画法等の見直し
- 地域の自然環境・社会環境を考慮した街づくりが進められるよう見直しを進める
(「見直し」に時間がかかる場合には「特区」制度を活用)
(2)地域の資源や文化を活用し安心して住み続けられる街づくりを目指す - ①地域学の推進(伝統、文化、習慣、歴史を学ぶ)
- 博物館の再建に市民・NPOが協力できるようにする(雇用促進策としても)
- ②地域資源活用の為のネットワーク
- 空き家・空きスペースの有効活用のための情報ネットワークの整備を進める
- ③エコハウスへの優遇措置を拡大する
- ④自然災害と温暖化に適応できる防災の強化
- ローカル技術をみなおしそれに新たな知恵を加えるとともに、地域の専門家を育成する(雇用促進策)
(3)人や自然との繋がりがある街づくりを目指す
- ①人口構造の急激な変化に即応したコミュニティの再生促進M
- 学校、公園、広場、公民館などを積極的に活用し、人が集う場に戻す(核づくり)
- ②ケア付きの共住(コレクティブハウス、世代同居など)の仕組みを作る
- 特に高齢者の孤独死を防止するために、プライバシィを確保しつつ共に暮らせる住宅を建設する
- 住民主体のケアハウス・寺子屋(地域の学校)の運営を支援する
3)雇用
(1)働く場と機会の保障
- ①最低限の生活保障の確保
- 地域の自然環境を活かした第一次産業の再生や、再生可能エネルギーの開発利用に向けた支援を充実させ、早期の雇用創出を図る
- ②多様な職能研修制度と再チャレンジの仕組み整備
- ③「公共」の範囲の拡大による雇用促進
- 復興・再生の場での雇用の拡大を図る
- 環境・福祉など市民サービスの部分に関してはNPOを活用し、ここを継続的に支援することで雇用の場を拡大する
(2)多様な働き方の実現
- ①地域環境資源を活用した雇用の創出
- 農林水産業、食品加工、太陽光・熱、風力、バイオマス、地熱、小水力、波力など多様な再生可能エネルギーの活用などで、雇用の場を拡大する
(3)NPOや社会的起業で雇用の確立
- ①NPOの基盤強化
- 無償ボランティアではなくNPOに対して適切な対価を支払い雇用の場として活用する
- ②コミュニティ・ビジネスの促進
4)交通
(1)人と環境にやさしい交通網整備を目指す
- ①安全で快適な「人」にやさしい道路(楽しく歩ける歩道、自転車専用道路など)の整備の促進
- ②公共交通機関のネットワーク再生と創成(低燃費のコミュニティバスの活用など)
(2)人と環境にやさしい移動手段を整備する
- ①安心・安全な移動技術の開発促進(自転車専用道路とセットで電動アシスト自転車など)
- ②交通弱者のためのモビリティー手段(デマンドバス、タクシー、コミュニティバスなど)の開発
(3)車に依存しないまちづくりを目指す
- ①集落の統合再編によるコンパクトシティづくりと歩いて暮らせるまちづくりの促進
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