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  • 平成24年度(2012年度)「「エネルギー・環境に関する選択肢」に対するパブリックコメントについて」

「エネルギー・環境に関する選択肢」に対する
パブリックコメントについて

今後のエネルギー・環境戦略のとりまとめにあたり、7月2日からパブリックコメントが開始された。
福島の原発事故を受け政策の転換を余儀なくされたことによる。

その詳細は、政府のホームページなどをご覧いただき、是非多くの方にパブリックコメントを提出して頂きたいが、ここでは、環境文明21共同代表の考え方を述べておきたい。


選択肢

3つの選択肢が提示されているが、将来的に、原発ゼロ社会を目指す私たちとしては、当然ゼロシナリオ(選択肢①)を選択する。しかし、選択以前の問題として、数値設定の前提条件や方法論等には、以下のような問題点があると考えている。

問題点(概要)

  1. 2030年までにGDPを2割以上成長させ、エネルギー消費量を1割カットするとの前提には問題があると考える。2000年から2010年までの我が国のGDP(名目)は減少しており、人口減少、高齢化等を考えると、これを上向かせる要因は乏しい。また、省エネについても、人口自体が1割近く減少する中、発電電力量を現状より1割カット(最終エネルギー消費量の約2割のカット)しても、1人当たりに換算すると、現状と何ら変わりがない数字にほぼ等しく、意欲的とはとても言えない。

  2. 化石燃料の燃料費は、資料によれば年間約17兆円で、これは燃料購入のために17兆円が毎年海外に流出していることになる。その一部を国内の再生可能エネルギーの開発、普及に投資をすれば、我が国の企業の再生可能エネルギーの開発力の技術がアップし、国内雇用の創出にもつながる。すなわち、化石燃料の節約はマイナス要因ではなく、むしろプラス要因と考えられる面が大きく、その認識が明確に述べられていない。

  3. どのシナリオを選んでも、廃炉の問題とともに使用済み核燃料の処理・処分の問題は残る。この選択肢を読む限り、どのシナリオをとっても必ず発生する廃炉や使用済み核燃料の問題に対する認識や危機感が誠に薄い。

  4. 国民的議論として、全国11箇所での意見聴取会開催があるが、わずか一月足らずと期間が非常に短く、参加できる人員も1会場あたり100-200と少数である。またパブリックコメントは、関係者からの組織的意見が多いことが指摘されており、必ずしも一般国民の意見を聞く手法としては適切ではない。今回もおそらく、原発推進の電力会社や関係業界、経済界から多数寄せられ、それが国民の意見とされる恐れが高い。さらに討論型世論調査は全国3000人に世論調査し300人で討論するが、わずか一回の実施である。そして何より、出てきた国民の意見をどう政策に反映するのか、しないのか、政策決定プロセスは全く不明である。国民的議論というにはあまりにお粗末である。

  5. 今回の東京電力福島第一原子力発電所事故の教訓は、原子力発電所は一度(地震であれ津波であれ、あるいはテロなどであれ)深刻な事故等が発生すると、国民生活や健康等に与えるインパクトは極めて大きく、さらに、長期にわたって、除染なども含めた膨大な事故処理と、被害を受けた人々に対する賠償が発生し、東京電力ほどの大企業ですら破綻してしまうということである。そもそも選択肢を考える場合、こうしたことがもっとも基本的な考慮事項と考えられるが、それに対する配慮、言及がまったく選択肢に書かれておらず、あたかも福島の事故がなかったかのごとき印象を与えるのは遺憾である。