東北復興応援ワークショップ ~三陸地域~

話題提供 3「市民の出資による太陽光発電所」
原 亮弘 おひさまエネルギーファンド株式会社 共同代表取締役

原 亮弘 おひさまエネルギーファンド株式会社 共同代表取締役

加藤氏、槌田氏がされた話を実際に長野県飯田市で市民の力で行政と協力してやっている取り組みについてお話させていただく。

そもそも私どもの活動はNPOから始めた。飯田市が環境文化都市を目指し政策を打ってきた中で、温暖化に対して市民もできることがある、あるいは市民でなければできないことがあるはずだという考えから、温暖化対策に向けたNPOを設立した。当時、あまり知られていないエネルギーの地産地消で循環型社会を目指したが、エネルギーの地産地消は地域資源を活かすことが重要である。飯田市は日照時間が長く、日射量が多い地域といわれており、この地域特性を活かそうと考えた。

最初は、会員や市民の寄付で、太陽光発電所を設置し温暖化対策につなげようとした。まずは地域に温暖化防止の活動を広めることを目的とし、子供たちに分かってもらえるように太陽光発電していることが可視化できる仕組みにした。当時、幼稚園児だった子たちは中学生になっているが、彼らが社会に出たときに、当たり前のように低炭素社会を意識し行動してくれるような人になってくれたらというのが私どもの願いであった。

会社の設立については、飯田市が環境省の「まほろば事業」に採択されたことが一つのポイントであった。同事業に同じように採択された筑波市では回らない風車を作ってしまったことがニュースでも取り上げられたが、飯田市では、市民共同発電の発想で始めた。従来は行政がそういった事業を行おうとすると、国の補助にあわせて市の財源を使って活動するが、市民の出資で資金を調達し税金を使わずに太陽光発電をやっていこうと考えたことが採択を受けた大きな理由になったと聞いている。採択を受けて市民共同発電を行っていた私どもと行政が一緒になって検討を始めた。しかし、3,4ヶ月の議論を重ねても結論が出ず、そうであれば、もともと市民太陽光発電をやっていた我々NPOが事業リスクを背負って行おうということになった。それが、2004年12月に設立したおひさま進歩エネルギー(有)である。

「まほろば事業」の正式名称は「環境と経済の好循環のまちモデル事業」であり、環境省がCO2を減らす環境、そしてそれが経済的にも循環して街づくりにもつながる、という要望の多いものだったため、次のような仕組みを作った。一つはお金の問題。自然エネルギーにはコストがかかる。その初期投資にかかるお金を市民の出資と国の補助金でやるという仕組みを作った。そこで出たお金をまずCO2を減らす事業に投入した。特に、一番大事なのは省エネと思っていたため、そこに重点的に投資した。次にどうしても必要なエネルギーに関しては再生可能エネルギーで作ろうと考えた。そうした時に、太陽光発電では電気、省エネではコスト削減という新しい価値が生まれる。この価値を現金として出資者にお返しする仕組みである。

エネルギーの省と創でCO2を減らしながら経済的にも循環する仕組みを作っていこう。私達は再委託会社なので、飯田市の公共財産である建物の屋根を借りて自分たちが調達した資金で太陽光発電を設置し、そこで生まれた価値を供給した。そこには行政からの資金は発生していない。しかし、生じた電気を使い、余ったものは電力会社に売る。

補助金は機器工事費の3分の2くらいは入って来ていたものの、この時代は再生可能エネルギーの評価は低かった。ただ、まずは新しい仕組みを作って社会に広まっていくことが狙いでもあった。

本事業にあたって設置場所の選定はかなり注意して検討した。一つとして、長野県南部は東南海地震の恐れがあることから、建物の強度についてしっかりと調査した。また、電力事業者とほぼ同額の単価で買うことに留意しなければならない。したがって、低圧利用の建物で公共的なところに設置していった。言い換えれば小規模分散で、比較的小さな施設を地域に沢山作っていった。この時は2004年度でしか補助金がつかなかったため、12月に設立した会社で1月から3月にかけて37箇所に一気に設置した。設置自体は地域の業者者にお願いしたが、何軒かの業者が大変協力してくれた。最初は自分たちの仕事を邪魔しにきたように思われていたが、結果的に仕事を作ってくれることがわかってきて、今では協力的である。

次に、やはりこれはビジネスなので、屋根の場所や角度などを考慮し、できるだけ多く発電してくれる場所を選定した。併せて、NPOの時代から行っていた太陽光発電を利用した環境教育も欠かさずやっていた。この仕組みでは飯田市から資金が一銭も出ていないが、成功しつつある最大の要因は行政の協力であったといえる。それは何故かというと、行政の財産を民間が借りる時は、行政財産の目的外利用の許可申請が必要。しかし、このケースに関しては、通常単年度でしか許可していただけないものを飯田市は20年という長い許可をして頂けた。もしも、これが単年度ずつの許可だと、この事業が本当に最後まで続くのかと出資者に不安を与えてしまう。しかし、飯田市が行政財産の利用を長期に認めてくれることで、この事業の継続を担保してくれる形になっている。このように行政が民間に長期間の行政財産の目的外使用の許可を出している自治体はほかにない。これは、新しい公共の一例になったと思う。

 >>東北復興応援ワークショップ第二回全容(PDF/875KB)は、こちら


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