東北復興応援ワークショップ ~仙台~

話題提供 2「再生可能エネルギーの可能性」
槌屋 治紀 システム技術研究所 所長

槌屋 治紀 システム技術研究所 所長

私は新しい再生可能エネルギーの普及および開発が進められていくことを希望しており、今日は、再生可能エネルギーについて、私が調べたり考えたりしたことについてお話ししたいと思う。

再生可能という言葉が正しい日本語なのかどうか、これは私も責任を感じている。再生可能エネルギーは英語で言うとRenewable Energyの直訳である。意味としては、太陽や風力など更新性の枯渇しないエネルギーを意味する。エイモリ―・ロビンスが出した「ソフトエネルギー・パス」を翻訳した当時、Renewable Energyを自然エネルギーと訳そうとしたら、石油や石炭なども自然界にあるエネルギー資源という反論が出る恐れがあるということを考慮して再生可能エネルギーという訳し方をした。例えば、日本の自然エネルギー庁は英語で「Agency for Natural Resources and Energy (ANRE)」と訳される。Natural Energyとすると風力や太陽光のことだけを指さず、ありとあらゆる天然資源が入ってしまう。したがってRenewable Energyという言葉が使われ、日本語では再生可能エネルギーという言葉が使われるようになった。昨年ソフトバンクの孫社長が日本自然エネルギー財団を立ち上げたが、その英語名は、JAPAN Renewable Energy Foundationである。そうでないと外国では通用しない、ということを申し上げておく。

石油や石炭、天然ガスなどを化石燃料という。この化石燃料は自然資本であり消耗していくものであるので、本来は消費すべきものではなく効率よく長期的に使うことが重要である。化石燃料の可採年数(確認埋蔵量/現在の年間生産量)は、石油46年、天然ガス63年、石炭119年となっている。この中で特に石油は、2006年に既存油田からの生産はピークを越えたといわれている。残っているのはオイルサンドなど採掘コストの高い石油資源であるといわれている。ただし、天然ガスに関しては、最近アメリカでシェールガスという技術が開発されて改善されている。シェールガスとは、深さ何千メートルの地中に高い圧力でガスを噴射し、ガスを取り出す技術である。しかし、色々な箇所でこれを行ってしまうと、地下水汚染が起きたり、地盤軟弱化の恐れがある。最近では、シェールガス開発場所で地震が多くなっているとの報告もされている。

再生可能エネルギーの特徴

再生可能エネルギーの特徴として、目標と問題点について説明したい(図を参照)。安定供給についてはシミュレーションの結果など後ほど説明するが、結論から言うと、太陽と風力は季節的条件が逆であり、両者は補完的な役割を担えることから、両者を組み合わせることが適切。エネルギー資源は国内に充分あるかについて、例えば太陽光発電の場合、ひと昔前には10万kw「山手線内分の土地が必要だ」などと言われてきたが、これは何も更地が必要だと言っている訳ではない。変動する供給源であるから、「大きな貯蔵源が必要」との意見では確かにある程度の容量は必要だが、無理な程度ではない。コストに関しても初期の設備投資は必要だが、その後はそんなにかかるものではないと考えられる。さらにソーラーや風力は大量生産によって今後さらに安くなると考えている。

日本で再生可能エネルギーはどの程度あるのかについて説明する。水力発電は大規模と中小水力を合わせて2000万kW程度、ちなみに世界では10億kWである。太陽光発電は337万kWで世界では4000万kWである。太陽熱は石油換算で55万kL、風力発電は250万kWである。設備利用率が低いのは太陽光発電であり、その利用率は12%程度しか稼働していない。風力は20%程度、水力は40~50%程度となっている。

私はエネルギーの持っている密度を比較することを考えている。太陽エネルギーは1㎡にピークで1kWが降り注いでくる。これはドライヤー2個分くらい。太陽光発電はそれを13~20%効率で電力に変換する。この効率が悪いという人もいるが、火力発電ですら40%程度であることを考えると悪いというものでもない。太陽光発電の効率は今後の技術開発で30%程度まで上がってくると考えられる。太陽熱は太陽エネルギーの30~70%を熱として利用できるが、これは70℃くらいの低温度の熱なので電気のように色々なものに利用できるというものではない。風力発電は風速の3乗にエネルギーが比例して、1㎡あたり20kWという非常に大きなエネルギーになる。バイオマスは年間のエネルギー捕獲量こそ低いが、そこに固定できるので、いつでも使えるようになる。しかし、効率は1~2%程度なので同じ土地面積から得られる電力は太陽光に比べ10倍くらい低い。また、波力発電は海岸線1mあたり、大きい時は25kWと、エネルギー密度が非常に大きい。しかし、大きすぎるために大抵の発電所の設備はエネルギーに耐えられず壊れてしまっている。これに耐えられる技術が開発されていない。世界的にみて、風力発電は2億5千万kWと普及している。これは、航空技術など風に対抗する技術の発達により経済的に成り立っている結果である。これに対して、太陽光発電はコストが高いが、エネルギー密度が小さいため壊れにくく寿命が長い発電といえる。しかしコストは大量生産によって、かなり下がってきている。

 >>東北復興応援ワークショップ第二回全容(PDF/964KB)は、こちら


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