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  • 平成30年度(2018年度)「エネルギー政策の歪みを正そう」

エネルギー政策の歪みを正そう

経産省の総合資源エネルギー調査会の基本政策分科会は、5月16日に「エネルギー基本計画」の改訂案を取り纏めた。この改訂案を基に、安倍政権はこの夏にも、新たなエネルギー基本計画を策定することになるという。

4年前に策定された現行の基本計画の見直しは昨年8月から開始されたが、その冒頭から、世耕弘成経産大臣が、原子力、石炭等の電源構成は変更しない旨、発言するなど、「パリ協定」発効後のエネルギーを取り巻く環境の激変に、日本はどう立ち向かおうとしているのか、その姿勢があまりの後ろ向きであることに、厳しい批判が各方面から寄せられていた。

それにも拘わらず、5月16日に決定された改訂案では、本質的にはこれまで各方面から寄せられた意見や批判は全く考慮されることなく、福島原発事故やパリ協定への前向きな対応も見られない、恥ずべき改訂案を国民と国際社会の前に提示した。


何故、日本はこのように歪んだエネルギー政策しか採れないのか。


エネルギー政策は、私たち国民の生活や社会・経済活動にあまねく直結しているだけでなく、気候変動問題を通じて気象災害などにも関係する重要な課題である。

にもかかわらず、現在のエネルギー政策は、経産省におかれたごく少数の限られた「有識者」によって、少なくとも骨格が決定されている。閣内でも河野太郎外務大臣が、日本の再生可能エネルギーの目標は低すぎる旨直言したが、こうした意見でさえ不規則発言として、提言に反映された形跡はない。まして、私たちNPOや日本の将来の発展を心配する良識ある企業人の懸念など、既得権益に固執する「エネルギー村」の住人には、歯牙にもかけられないのが現実である。

しかし、エネルギー政策という全ての国民生活やあらゆる経済活動に深く関わる政策が、ごく少数の限られた関係者だけで実質的に決定される歪んだ仕組みを今のまま放置すれば、エネルギー関連の業界や特定の「有識者」にとっては望ましくとも、日本経済の健全な発展や、世界が取組を進める気候変動対策からは決定的な遅れとなる。


こうした事態を回避するために、私たちは次のことを強く要望する。

1.エネルギー政策の形成過程をよりオープンにし、次世代の視点を交えて決定できる仕組みを作るべきである。当面は、たとえ決定の時期が遅れても、今回の改訂案を全国各地での公聴会にかけ、国民の意見を幅広く聞くことを強く要望する。

2.政府内に「エネルギー・環境省」を設置する方向で検討を開始すべきである。

3.国民生活に深くかかわる課題であり、与野党とも最重要な政策課題として真剣に取り組むことを強く期待する。

2018年5月 認定NPO法人環境文明二十一
共同代表 加藤 三郎
藤村コノヱ


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