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内閣総理大臣 安倍 晋三 殿                    
新型コロナ対策を、持続可能な脱炭素社会の実現につなげて!

昨年末より始まった新型コロナウイルス感染拡大が、世界の人々の暮らしや経済に大きな打撃を与え続けている。その影響はこれまで貧困や格差に苦しんできた社会的弱者に特に大きな犠牲を負わせるなど、人道的にも公衆衛生上もかつてない深刻な状況にあり、各国政府もその対応に追われている。

この緊急事態に対する対応は必須であり、それに異を唱えるものではないが、一方で私たち人類の生命基盤であり社会経済活動の基盤でもある“環境の危機”に対する対応が、コロナ問題の陰に隠れ停滞・後退していることに対して、大きな危惧を感じている。 併せて、国際的には、グテーレス国連事務総長がコロナ危機対策への投資は全てを脱炭素社会実現につなげる必要がある旨を発言し、欧州委員会ではこの危機からの復興計画として「グリーン・トランジション(環境配慮や持続可能性のある社会への移行)」の促進が強調されている。日本でも経団連に属する企業から同様の発言が出始め、小泉環境大臣が気候変動イニシアティブと「グリーン・リカバリー」に関する意見交換会を開催するなどしているものの、政権としてのこうした動きは殆ど見られない。

それどころか、この機に乗じて脱炭素に逆行するような動きも見られる。

例えば、エネルギー供給強靭化法は、本来ならば、石炭開発を拡大するような「JOGMEC(石油天然ガス・金属鉱物資源機構)改正案」や、やり方次第では再エネ普及を妨げる恐れのあるFIP制度、長距離送電網の整備など、個々に慎重審議が必要な事案について、束ねた法案として審議・成立させた。また再エネ普及予算が原発事故処理に流用できる改正特別会計法を、災復興関連予算と抱き合わせにした「束ね法案」として成立させた。


政府が提案する「新しい生活様式」を実現するには、私たちの価値観や暮らし方の転換だけでなく、それを支える社会・経済の有り様そのものを転換する必要があることは言うまでもない。にもかかわらず、次世代に大きなツケを残す大規模な国債発行とその不透明な使途・配分、さらに上記のような不透明な政策形成は、従来の悪しき慣習を引きずるものであり、「新しい生活様式」=脱炭素社会の実現につなげるという国家の意志が感じられないのは誠に残念である。


私たちは、気候変動に伴う気象災害や熱中症への配慮等に加えて、コロナ対策と今後の復興策が、脱炭素化に向けた国際的な流れと同調する政策となり、持続可能な市民社会の構築にもつながることを切に望むものである。

2020年6月17日 認定NPO法人環境文明二十一
代表 藤村コノヱ
顧問 加藤三郎


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