2003年9月号会報 巻頭言「風」より

環境文明21の舞台裏

加藤 三郎


今から丁度10年前の93年9月、私は当会を立ち上げたが、それに先立つ一ヶ月半ほど前に27年におよぶ公害・環境対策一筋の公務員生活に終止符を打った。NGOに転身したのはいくつか理由があるが、最も重要なのは役人時代の最終段階でWWF、グリーンピースなどの国際的な環境NGOが地球温暖化対策などに極めて積極的で建設的な働きをしているのを条約交渉に臨むたびに目の当たりにし、それ以前に持っていたNGO観を180度転換したことである。これによって私自身もNGO生活をしたいと思い、まず環境文明研究所を作り、同時にNGO活動の準備を始めた。

93年10月の本誌創刊以来、環境問題に対する私の思いや、当会の活動の状況や方針について本欄でつづってきたが、当会事務局の舞台裏についてはほとんど語ってこなかった。意識的に隠したわけでもないが、会報は舞台裏を書く場ではないという思いから、書かなかっただけである。

しかし最近は、世間一般のNPOに対する関心が高まり、私もしばしば、資金はどうしているのか、スタッフはどういう人がいるのか、など色々と質問を受けることも増えたので、この機会に当会の舞台裏について語ってみよう。

1. 環文研との二人三脚

NGO活動をしたいのに、なぜ、まず会社を作ったかというと理由は明白である。当時私は、日本においてはNGOは会費などをいただいたとしても、十分な資金力は集まらないと思っていたので、NGO活動をする資金と、そこに働く人の生計を支えるため会社を立ち上げたのである。当初は「個人事業所」としてであったが、それでは対外的に制約が多いので、2年足らずのうちに株式会社に「格上げ」した。

格上げしたといっても内容はほとんど変わらない。つまりNPO活動部門を支える調査研究、資金、そして当会へのスタッフの提供が会社としての事業内容。これは、十年経っても変わっていない。この十年の間に会費も少しずつ増え、助成金などもらえるようになっているが、それでも私たちの活動とそこに働くスタッフの生計を維持するには、NPOとしての収入だけでは足りないからである。

しからば、環境文明研究所はどんなことをやる会社かというと、環境文明論、環境倫理、政策提言、そういうのを「商売」にしている日本でも唯一の会社だと思っている。ここの収入源は私の講演料、新聞雑誌等に寄稿する原稿料、あるいは出版活動から得られる印税、一、二の企業団体からの顧問料、さらに役所や民間企業からの依頼を受けて実施する調査費などがほとんどすべてである。

この研究所の職員が、すなわちそのまま環境文明21の事務局スタッフである。私は環文研の社長であるとともに当会代表、藤村コノヱさんは環文研の取締役であるとともに当会の専務理事といった具合である。本来ならば、NPO活動一本で財政的にも自立できることが望ましいが、現在の日本の税制が変わらない限り、この二人三脚は当分続けざるを得ない。

2. スタッフ

現在の社員を紹介しよう。私と藤村コノヱ(敬称略)のほかには、経理を担当する那須博、会の事務と循環社会推進国民会議の事務局も扱っている後藤文恵、私の秘書業務をしている鳥居享代、この6月から加わった門田祐子、さらに会報の編集を専門にしている田尻絵理子が常にかかわっているスタッフである。この他に客員研究員としてこの春学位を取ったばかりで、当会の会員企業である上毛緑産工業から派遣されている高橋岩仁、それに前からの荒田鉄二がいる。さらに今年の春から損保ジャパン環境財団のインターンシップのプロジェクトにより、横浜国立大学の門井伸代と中村周のふたりが大学院生インターンとして週に2、3回つめている。毎月決まった形で研究所から給与が出るのは私を含め7人である。

3. 収入と支出

当会の収入源は①会費収入、②事業収入、③寄付金、助成金収入、④その他となっている。平成14年度では、会費収入1589万円(万円以下は4捨5入。)、事業収入200万円、寄付金等510万円、その他は千円足らず、合計すると2229万円で、これがNPOとしての収入の全てである。

それに対して支出は、会報の発行経費445万円、調査研究392万円、部会活動18万円、普及啓発のうち教材の作成65万円、ワークショップの開催115万円、エコツアー48万円、また全国交流大会関係費用として169万となっている。昨年の場合、日米合同セミナーをハワイで行っているが、それに関する諸経費としては143万円、さらに業務委託費、つまり会から環境文明研究所に業務を依託(人件費、オフィス代など)する費用として毎月100万円、1年で1200万円だけを支払い、管理費として25万円、その他13万円など、支出合計は2634万円になっている。

つまり収支で見ると平成14年度の場合は約335万円ほどの赤字となっているが、これは未収金によるところが大である。いずれにもせよ、環境文明研究所があるために、資金面ではなんとか回っているのが実態である。そのため比較的少ない予算でも(といっても環境NGOとしてはかなり大きな部類に属するが)なんとか持続している。

4. よろしかったらカンパでも

このようにして環境文明21をこの10年間支えてきたが、さらに強固なものにし、役に立つ活動を続けるために、もしよろしかったら、活動資金に、いかほどなりともカンパでも寄せていただければたいへんありがたい。

それに加えて個人会員、企業会員とも会員が増えるのは、当会の財政基盤を広げる意味でも、活動を多くの皆さんに知ってもらう意味でも重要であるので、会員拡大にもお力添えていただければ幸いである。

なお、カンパしていただける場合には次の振込先に入れていただければありがたい。

振込先:郵便振替口座 00220-1-51770、加入者名:環境文明21