2004年6月号会報 巻頭言「風」より

憲法部会を立ち上げます

加藤 三郎


◆アンケートありがとうございます

前々月の本欄で「憲法をみんなで議論しませんか」と題して私は憲法改正をみんなで議論し、その成果を広く政治家やマスメディア、さらに一般の方々に訴えて行きたいと述べました。そしてその号で憲法問題についての会員の意見を伺うためにアンケートを実施しましたが、67人の方からご回答を頂きました。700名近くの会員や本会報を見て下さっている方々が少なく見積もっても1000人以上いる(企業や行政機関では多くの人が見ていますので)ことを考えると回答者の数は多くはありませんが、自由記述欄に書き込んでくださった真剣さを見ると満足すべき結果を得たと考えております。ご協力くださった方々、本当にありがとうございました。結果は本号7~9頁に書かれている通りですが、各問毎に私のコメントを簡単に述べておきたいと思います。

まず問1の憲法改正問題を市民レベルで議論することの是非についてのは回答者の95%が「当然」と答えていらっしゃいます。予想した通りとはいえ、力強い結果です。

問2でなぜ賛成なのかという選択肢を見ると①と②で約8割になっています。自由記述欄には「国民は時々は憲法を読み直して、この国の'形'や方向性(行く末)を真剣に考える機会を持った方が良い。我々が何をしてきたか、今、何をしているのか、これから何をしようとしているのか、を。」、「市民だけでなく、政治家も法律家も学者も、あらゆるレベルで検討すべき。市民だけを特別扱いすべきではない。」などの意見がありました。

問3で反対は3%しかおらず、数は少ないのですが、「改正論の多くは第9条であるが、民主的条項の弱化を狙っていることが明らか。現に改正論者の多くは、アメリカに追従して戦争を認め、環境破壊を批判せず、教育基本法やジェンダーフリーを攻撃している。加藤さんの意見とは別次元の動きである。」といった意見もありました。

問4の憲法部会を当会に設けることに賛成かどうかにつきましては、85%の方が賛成でした。賛成論の代表的なものは「第9条のことを意識しすぎて、政治色を帯びることを嫌う傾向にあると思われるが、環境問題を盛り込むことを議論することについては、何者にも臆することなく取り組むべきである。」その一方で次のような注意を促す意見もありました。「この問題について、政治色などを出さずにコンセンサスを得る事は非常に難しいと思う。仮に出来たとしても、部会でも話し合いの過程を全て公開すべきと考える。また改正手順などについても、意見を外に発信して欲しいと思う。現在の状況では、参院選の結果如何では、すべてが最後になし崩し的になる可能性があると思い危惧している。」

問5で部会への参加をうかがったところ、是非参加したいという方は13%。内容を見てから考えるが6%でした。しかしこれは、関心がないからではなく、時間的、場所的に不可能に近いという理由が41%でした。特に「出来れば関西地区でも参加できるように部会活動を行ってください。」、「参加の意思あり。但し仕事の関係で週日遠方へ出向くのは不可能。インターネットを利用した討論、投票、掲示板などの方法(システム)を考えていただきたい。」という意見がありました。

最後に私がその号の「風」に書いたことに対する意見に対しては9割を越す方が基本的に賛成をしてくださって、私も勇気づけられました。

◆9条問題よりも根源的な環境問題

私自身はかねてから、憲法問題=9条問題との議論が長いこと続いたことを大変不幸に思っておりました。特にここ10年ほど地球環境問題の激急な悪化を見ておりますと、持続可能な社会をつくるという観点からは、環境問題のほうが9条問題よりも根源的な問題なのではないかという思いが強くなっています。まして最近議論されている年金問題などは身近な関心事ではありますが、環境問題に比べれば、はるかに重要度の低い問題だと考えます。なぜなら地球現模で環境が激変してゆき、様々な困難が次々と生起してくれば、将来年金がいくらもらえるかということはたいした問題になりえないと思うからです。

2001年9月に同時多発テロがアメリカで発生するや、ブッシュ大統領は国際社会に協調と支持を呼びかけ、極めて精力的な外交活動を展開しましたが、その一方で同大統領は京都議定書や核実験禁止、小型武器規制、人種差別反対など、人類社会が長年にわたって積み上げてきた協調努力に、次々と背を向けてきたことを批判して、毎日新聞の2001年10月3日付で「重視すべき「緩慢な危機」――米国よ、国際協調に戻れ」と題する意見を寄せました。これを書いた後、3年近くの時間が経ち、特にイラクでのアメリカの一連の対応を見ていますと益々その感を深くしています。

21世紀の世界においては、軍事的に対応できることは限られてきており、より総合的な力で人類の平和と安定、地球環境の保護そして経済的な保障をしなければならないとき、誤解を恐れずあえて言えば、9条問題よりも環境問題のほうが21世紀の世界秩序の中ではより根源的で、重要だということを私は主張したいのです。

◆部会を立ち上げます

憲法部会を作ることに対して、会員の皆さんが賛成してくれるかどうかを危惧しておりましたが、多くの賛成があったことを嬉しく思っています。この部会で何をするべきかは参加される会員さん(時間的、場所的に定期的参加が不可能な方の場合のメールやFAXなどによるコミュニケーションも含めて)の意向によることはもちろんです。こうした流れを受けて、早速本年夏より、他の部会と同様、月一回のペースで会合をもちます。ここでは、社会の持続性を憲法にどう反映させてゆくかという点に明確に絞って議論をしたいと思っていますが、どういう動きになるかは参加するメンバーのご意見に従うつもりです。いずれにせよNPOとして、持続可能な社会をつくる上での憲法の果たすべき役割を純粋に検討し、その成果は、一般市民、メディア、政治家など幅広く呼びかけていきたいと思っています。7月30日にまず第1回を開催します。沢山の方のご参加をお待ちしています。