2007年6月号会報 巻頭言「風」より

間もなく15年目へ~共同代表制の導入~

加藤 三郎


当会は、1993年9月の設立ですので、この9月から15年目に入ります。立ち上げの直接のきっかけは、まだ役所にいた私が、地球温暖化対策を巡る条約交渉に携わったとき、本来政府間の交渉であるべき場においてWWF、地球の友、グリーンピースといった国際的なNGOが、情報量、分析力、人脈、また発信力において政府を凌ぐ活躍をしているのを目の当たりにしたことです。

それ以前の私は、市民団体、NGOといったものにポジティブな評価を与えていませんでした。正直言って「胡散臭い集団」といったネガティブな印象を持っていたと思います。外交の場での経験が私の評価を根本的に訂正しただけでなく、彼らに匹敵するような団体が日本にないことに気が付き、それなら及ばずながらやってみようという思いで、仲間と語らって立ち上げたのです。

その際、当会の目的は何か、どういう性格を持たなければならないかをかなり議論しました。企業や行政とは違う専門性を持ちつつも、市民感覚を常に忘れずにといったところが、共通の思いでした。しかし、この14年、NPO活動をしてきて、日本の社会こそNPOの存在価値、必要性が高まってきたことを感じています。

社会には、企業、行政、学者社会、メディアなど様々なセクターがありますが、各セクターはあまりにも短期的経済的視点で、誠に忙しく動き回っています。大きな利益を上げている企業においてすら、いつ調子が狂い出すか分からないという思いからか、短期的な利害にこだわっているように思います。学者も「成果」を出すのに忙しく、政治の世界も数年ごとにある選挙に追われて、遠くの世界を見ずに、足元の問題にかまけているように思えてなりません。

私が役所に入った頃は諸先輩から、「行政は50年先、100年先のことを考えて仕事しろ」と常に言われたものです。最近は、役所も逼迫する財政に追われ、政治家からの注文は厳しく、その上、社会から様々な批判を受けて、遠くを見る余裕が失われたように見受けられます。この日本で、国益と長期的な発展を真剣に考えているセクターはどこにあるのだろうかと思わざるを得ません。少なくとも当会は先を見て活動している数少ない団体であると私は自負しています。

ところで、去る5月18日、当会の「社員」総会におきまして、定款の一部を変更して、共同代表制の導入を全会一致で認めて頂きました。具体的には、当会の代表理事は一名が原則なのですが、「特に必要がある場合には、代表理事を2人とすることができるものとし、その場合、この2人を共同代表と称する」と変更しました。なぜか。大きく言って、2つの理由があります。1つは、どういう組織であれ、一人のリーダーがあまり長くやると、固定化やマンネリ化の弊害も出てきます。一人の個性で長く引っ張るメリットも、もちろんありますが、デメリットも多いことは、社会によくある通弊です。もう1つは私の年齢です。53歳でこの会を立ち上げたので、この秋には、68歳になります。今のところ健康ですし、この会をリードする気力も体力もまだあるとは思っておりますが、年齢から来る制約もあり、将来におけるスムーズなリーダーシップの交替を可能にしなければいけません。

ここ数年、このことを考え続けて参りましたが、幸い、この会の創立者の一人であり、理事そして専務理事として長いこと務めて下さっている藤村コノヱさんが、しばらく私と共同でこの会をリードすることをやっと決心してくれました。

藤村コノヱさんは、会報でも度々お考えを述べていますが、それ以外にも、部会活動、シンポジウム、ワークショップ、エコツアーなどで、直接、彼女の明るい人柄や見識に触れた方も少なくないと思います。学校は教育学部を出て、郷里の大分県で数年間小学校の教師をした後、縁あって東京で環境関係の仕事をし、環境教育の専門家として「エコ企画」という会社を自ら立ち上げ、長くこの分野で活躍している方です。議員立法で成立した環境教育推進法のプロモーターであったことは、よく知られていると思います。性格は活達で、最近は理念面でも私を助けてくれるだけでなく、事務局に集う若者たちの良き指導者、相談相手としても頑張ってくれています。なかなかの勉強家で、昨年は、ハワイ大学に語学の短期留学、また本年の4月からは、東京工業大学の社会人向け大学院博士課程でNPO論の勉強を開始している、といった具合です。

15年目を迎える当会の課題としては、3つほど挙げてみたいと思います。

この会にとっての財政的基盤ともなり、社会に対する働きかけの最前線にもなる会員の数を増やしたいというのが、第一番目の課題です。これは、全てのNPOにとっても大きな課題ですが、当会も会員数は少しずつ減ってきています。冒頭に述べたNGO・NPOの日本における役割の重要性を考えますと、1人でも多くの方が会員となって、活動を支え、また私たちの思いを広く社会に伝えていただく役割を果たしていただければと願わずにはいられません。

2番目の課題は、私たちは様々なレポートを作ったり、政策提言をしたりしていますが、社会への働きかけ、発信力をもっともっと大きくしなければいけないと思っています。これも今後の課題です。

3番目は、会員の皆様に、アクティブな会員になっていただきたいということです。会費を払って活動を支え、会報を読んでくださる、これももちろんありがたいことですが、それだけではなく、自らも部会活動に参加する、多忙であったり、遠隔の地にあって、出にくいようであれば、各地方において輪を広げていく、あるいは資金面や会員を拡張するといったようにアクティブな会員になっていただければ、ありがたく存じます。ご苦労が増えるでしょうが、社会を少しでも持続可能な良い方向に変える喜びも、きっと大きくなるとこれまでの経験から確信しています。

引き続き当会の活動に様々な形で、アクティブに参加して下さるよう、藤村コノヱさん共々、お願いいたします。