2008年11月号会報 巻頭言「風」より

環境文明21をより知っていただくために

藤村 コノヱ


1993年9月に「21世紀の環境と文明を考える会」として設立され、その後NPO法の施行にあわせ99年に現在のNPO法人環境文明21と改称した当会も、この9月で成立満15周年を迎えました。これもひとえに会員の皆様と、助成金などの形でNPO活動を支援くださった社会の様々なセクターのお陰と、深く感謝しています。

15周年を迎えるにあたり、会員の皆さんにはアンケートを、そして理事の皆さんには会報へのご執筆を通じて、環境文明21の今後の活動への御意見などを伺ってきました。その中には励ましもあればお叱りもありましたが、環境文明21の組織としてのメッセージや現在の活動状況やスタッフの思いが適切に伝わっていないのではないかと思われるものもありました。そこで今回は、まず環境文明21の現状をお知らせしたいと思います。

ご指摘の中で最も多かったのが加藤共同代表のいわば「個人商店」からの脱却ということでした。私自身「専務の悩み」(会報2000年10月号)にも書きましたし、10周年記念シンポジウムの席上でもある参加者から「加藤さんがやめたらこの会は終わるだろう」という趣旨の発言もあり、加藤代表はもとよりスタッフ一同そこから抜け出し、「環境文明21」として認知してもらうには、どうすればいいか日々考え、少しずつですが実践してきました。昨年、共同代表性を導入したのもそのような気持ちからです。

また部会活動の活性化にも力を入れてきました。例えば、環境教育推進法は環境教育に熱心な有志20名ほどが環境教育部会をたちあげ、スタッフとともにロビー活動、広報活動、署名集めなどを展開した結果、法律として成立させることができました。また憲法に環境条項を!の活動も同様に、5~6名の熱心な会員さんが毎月会合を持ち議論を重ね知恵を出し合ったものです。グリーン経済部会で提案した10の提言も、「食べる」「働く」「買う」といったテーマごとに担当者を決め、座長には会員の柴山さんになって頂き議論を重ねました。まとめの段階では、主に我々共同代表と事務局の研究スタッフが中心となって取りまとめましたが、そこに至る多くの作業は部会活動に参加してくださった会員有志が支えてくれたものです。また最近は広島、関西、富山、古河、群馬など地方の会員さんと協働でシンポジウムを開催することが多くなりました。東京だけの活動、加藤共同代表を中心とした活動から、会員と共に活動する流れを築いていきたいという思いからです。

収入構造も以前とはずいぶん変わってきました。以前は講演収入が多かったのですが、現在は会費収入と研究助成が大きな部分を占めるようになっています。また助成金の内容も調査研究的なものに加えて、一般事務のスタッフも関われるような組織運営に関する助成にもチャレンジしているところです。スタッフ一人ひとりが研究、教育、経理、会員管理、編集、広報など担当の分野でパワーアップし、「環境文明21」として評価していただけるよう頑張っているところです。

一方こうした内部状況とは別に、NPOを取り巻く社会状況も当会の活動に大きく影響します。環境社会学者の長谷川公一氏は、環境運動を活性化させ社会的影響力を及ぼすようになるには、①政治的機会の開放性、②資源動員力の向上、③普通の市民をいかにして巻き込むかが重要だと言っていますが、これを環境文明21の活動並びに現在の日本社会に当てはめてみると次のようなことが言えます。

まず①については、環境文明21は政策提言型NPOなので実際に我々の提言を政策に活かす有効な機会をもっと増やすことが必要です。しかし政策や法律は官僚・行政が作るものと長いこと考えられてきた日本には、政策形成過程での市民参加が制度的に保障されておらず、特に国政において我々の提案を政策に反映する手立ては、政治家へのロビー活動、報告書、一般誌や雑誌への投稿などに限られています。役所の審議会メンバーになって発言する方法もありますが、現在の審議会はメンバーも役所が決めるなど役所のコントロールが強く、例えNPOが建設的な意見を提案しても聞きおかれるだけのことが常で、政策に反映されることはほとんどありません。

また②点目については、財政基盤の弱さから十分なスタッフを継続的に育成・雇用するのが困難な状況です。環境保全活動などNPO活動の社会公益性を認め、寄付金に対する税の優遇措置、助成金などNPO活動を財政的に支援する方策がもっと拡大するといいのですが、これについても日本は諸外国に比べて遅れています。特に助成金に関しては人件費が認められなかったり、採用枠がNPOには厳しく大学の研究者が優先されることが多いようです。「大学教授は給料の保証があって、その上で研究助成を申請する。我々NPOは生活費も活動費も会費や助成金から捻出する。その違いが世の中で理解されていない」ということです。

さらに③に関しては前述した様々な制約のため、調査・研究した結果を報告書に取りまとめ会報で発信したりロビー活動をするのが精いっぱいで、それを社会全体に広めたり、それをもとに会員の勧誘をするなど多くの普通の人を巻き込むだけの人材や活動のゆとりがないのが実情です。

もう十年も前に欧米のNPOの調査を行った際、同行したスウェーデン人の友人が「日本のNPOは国も国民も本気で応援してくれないから大変ね」と同情されたことがありますが、NPOを取り巻く社会状況は当時と大きくは変わっていないのかもしれません。

しかし、地球温暖化の進行など社会の持続性はますます失われています。政治家は政争に明け暮れ日本の向うべき姿を描ききれていません。官僚も省益を最優先し政策には誰も責任を取ろうとしません。こうした中で志ある市民によって組織化されたNPOの役割はますます大きくなっています。

そして環境文明21も15周年を迎え、これまでの「新たな文明の探求」といった社会の羅針盤としての役割を継続することに加え、世の中に訴え、社会を動かす力をつけていかなければなりません。そのためにも私たちスタッフ一人ひとりが力をつけるとともに、皆で支え活動する「環境文明21」としての発展の時期に来ていることを会員の皆様にも認識していただき、さまざまな形で活動の一翼を担っていただきたいと切に願っています。