1995年11月号会報 巻頭言「風」より
環境倫理の具体的項目10カ条私案
加藤 三郎
本誌で繰り返し述べてきたように、私達は今、有限な地球で生きてゆく人間の倫理ともいうべき環境倫理のプロジェクトをすすめている。そのプロジェクトでは、①環境倫理とは何か、②何故必要か、③環境倫理はルールか、価値観か、思想・哲学か、④それは地域や時代とともに変わるものなのか、⑤その具体的項目は何か、などを巡って議論している。初めのうちは、あえて周辺部分をタタイテいたが、最近では軌道にのってきて、そう遠からずまとめる中間報告が楽しみになってきた。
私は、最近のグループ会合で、⑤に関連し次のような考えを表明してみた。仲間うちの評価は必ずしも芳しいものではないが、ここに披露して会員の皆様の反応も知りたいと思う。
私としては、環境倫理の具体的項目としては、仏教の「十善戒(不殺戒、不盗戒、不淫戒など)」や「モーゼの十戒」のように、わかり易く、具体的な10項目ほどの心得が適当と考えた。地球市民として生きる心得としては、多すぎても少なすぎてもよくないと考えたからである。
次に内容としては、(1)地球の限界のなかで人類社会の持続性を確保する「循環」、(2)生きものあっての人間としての生存及び人と人との共生の自覚を表す「共存」、(3)貪欲は結局は人間社会を破壊するとの自覚を大切にする「抑制」の三つをキーワードと考え、それにあてはまる心得を10カ条ほど考えてみた。
まず「循環」に関しては、
- 地球の環境には限りがあることを常に考慮に入れること
- もののいのちを大切にし、「もったいない」という心で生きること先祖に感謝し、子孫の活動基盤を維持することを常に心に留めること
- 再利用や自然への還元に不断に心がけること
- この地球に生まれ、他の生きものと共に生きる奇跡を感謝していること
- どの国の人も、地球市民として受け入れ、助けうこと
- 世界がこければ、やがて日本もこけることを認識していること
- 貪欲で地球の環境を損なっては元も子もないと自覚していること
- 足るを知り、自然や文化を愛好して心豊かに生きる知慧を持っていること
- 量の拡大ではなく、質の拡充を追求すること
この私案は、具体的な項目に関するあくまで試案である。もっとよい知恵が出るに違いないし、当会倫理グループとしても、この議論を深めることとしている。同時に私としては会員の皆様のご意見も広く伺いたい。ご意見を事務局までお寄せいただければ幸甚である。