1996年10月号会報 巻頭言「風」より

意志の上に3年

加藤 三郎


今から3年前に本会は生まれた。地球環境の悪化とその原因を考えると、21世紀の文明は、とうてい20世紀の延長ではあり得ず、根底からの変革を要するとの基本認識からこの会を組織し、友人・知人を中心に参加を呼びかけた。その時の気持ちは本誌の創刊第1号の“座して待つか、働きかけるか”に述べた通りである。

「根底からの変革を要す」といっても、当初はどこから手をつけ、何をすべきかが明瞭に見えたわけでもない。手探りの遅々たる歩みではあったが、それでも満2年たった時点で、何とか会の方向性を(1)地球の有限性と環境の破壊とが明確になってきた今、人が生き、経済活動をする上で何が重要かの尺度である価値観を再構築すること、(2)その価値観を反映して現在の制度のどこをどう変えるべきかの大綱を検討し、提言することを主体とし、(3)余裕があれば新文明で必要な技術の革新を応援すること、の3つに大きく整理した。

その大きな流れに沿ってこの1年、例えば環境倫理の検討、静脈産業の位置づけ、景気と環境保全との関係、日米市民による意見交流、3×3(サン・サン)マトリックスの提示、日本における環境NGOの可能性の検討、憲法における「環境」の扱い、生きものと文明などを追ってきて、様々な視点から考える機会を提供し得たかと思う。「石の上にも三年」という言葉はあるが、われわれの場合、今のままでは21世紀は危機になるという懸念と、手遅れになる前にできるところから何とかせねばとの意志で3年やってきた。日本に現在NGOはたくさんあるが、価値観や制度の変換を目指して活動している団体は少なく、ユニークな存在であり得たと自負している。

4年目に入ってからの活動としては、前述の(1)~(3)の基本的方向性は踏襲するにしても、視点はもう少し身近なところにまで広げ、例えば循環型経済社会を目指して挑戦している企業や自治体の活動、外国での動きの紹介や分析なども積極的に取り込んでゆきたいと私は考えている。それに加え私達のメッセージが届く範囲を広げ、社会に対するインパクトを増す観点からも現在の約800人(団体)の会員を増やしたいと願っている。

会員の皆様はすでにお気づきのことと思うが、この11月16日(土)の午後、3周年を記念して本会としては初めての全国交流大会を川崎市内で開催する。全体的なテーマは、“みんなで考えよう「持続可能な社会」”であるが、三つの分科会にも分かれて①ライフスタイルと制度、②技術と企業、③会の今後のあり方を参加者で検討する予定である。本会の会員は全国に散らばっており、川崎市までお越しいただくのは費用の面でも時間の面でも負担の大きい方も多数いらっしゃると思うが、本会としては初めてのことなので、大勢来てくださり、充実した意見交流ができることを切に願っている。