1997年3月号会報 巻頭言「風」より
20%クラブの発足
加藤 三郎
私は長いこと環境庁など国の機関に身を置いて公害・環境対策分野で働いてきた。その仕事の性格上、地方公共団体と一緒に仕事をする機会にしばしば恵まれ、私は多くの自治体職員とも同僚、仲間としてつき合った。
3年半ほど前にその職を辞し、今の仕事を始めると、それまでよりも一層近いところで自治体の仕事を見るようになった。ある時は自治体の環境行政の企画にあずかり、ある時は職員の研修に招かれ、またある時は調査ものの委託をうけるなど様々であるが、ICLEIという国際環境自治体協議会を通じての体験は特に貴重である。1994年6月、ICLEIの関係でマンチェスターでの自治体間の国際的な集まりに参加したときに、次のような主張に触れた時には特に感銘深いものがあった。それは、
- 自治体は、帝国や民族国家のなかにあってもそれより永続し、社会生活の中心、経済活動の場そして文化、遺産、伝統の守護者として生き抜いてきた。自治体は、家族や近隣とともに社会と国家の基本である。自治体は産業、工芸、商業、教育及び統治の中心である。
- 人間の生活が持続可能であるためには、まず、地域が持続可能でなければならない。自治体は、環境問題や住民に最も近いところにいるだけに、あらゆるレベルでの行政機関ともども人間と自然に対し責任を持ち、ライフスタイル、生産、消費、空間利用パターンの転換に重要な役割を果たす。
- 自治体は、建築、社会、経済、政治、自然、環境面での諸問題に最初に対処する最大の単位であるとともに、それらの問題を全体的かつ持続可能な方法で解決し得る最小の規模である。われわれは、持続可能なライフスタイルを確立し、まちを持続的なものに設計し、管理する力も知識も創造力もあり、その責務を果たす用意がある。そのためには、自治体は十分な権限を持ち、財政的基盤が付与されることが不可欠である。
このような思想に触れてきたなかで最近おもしろかったのは、神奈川県の湘南国際村で本年1月末に開催された「持続可能な都市のための20%クラブ」国際ワークショップである。ここでの最終日に合意された設立規約によれば、20%クラブの目的は、概ね5年間で達成することを目指して、環境負荷要因の20%削減、または、環境改善に資するものの20%増加という数値目標を定めて環境改善に取り組むことにより、持続可能な都市の実現を目指すことである。なお、目標は一つでも複数でも構わない。
また、その活動内容は、次の二つである。
- 加入自治体間で情報交換や経験の交流を促進することにより、環境問題解決のための取組みの進展に寄与する。
- 加入自治体が他の自治体や地域団体、中央政府、国際機関等と緊密に協力して、地域環境の改善に重要な役割を演じ、地球環境の改善にも寄与する。
うれしいことに事務局によれば、すでに内外の50近い自治体が、このクラブへ入会または入会意思を表明しているという。この20%クラブの誕生に立ち会った私としては、質・量ともに力強い発展を願わずにはいられない。企業、NGOともども自治体のアクションは重要なのだから。