2003.4.17 持続可能な社会に向けた環境教育・環境学習推進法(仮称)をつくろう!緊急集会 報告
4月17日東京・星陵会館で、持続可能な社会の基盤である環境教育・学習を社会に根付かせるための法律を今国会で成立させて欲しいという私たちの思いを国会議員に伝えると共に、法制定に向けた国会の動きや各党の考え方を聞くための緊急集会が開かれました。
当日は約350名の方が参加して下さり立ち見が出るほどでした。また国会からもこの問題に尽力頂いている与野党の議員など、多くの関係者が駆けつけてくれました。
最初に、愛知和男推進協議会会長がこれまでの経過説明をした後、各党を代表して、次の4国会議員から各党の考え方の説明がありました。
【各党代表からの説明概要】
•鈴木恒夫衆議院議員(自民党)与党3党環境教育小委員会座長
環境教育を推進するための法律作りについて勉強会を続けてきたが、4月22日の環境教育に関する関係部会長会議で自民党案がおおまか固まる見込みで、その後与党3党合意にもっていきたい。現時点での法律の名称は「環境保全の普及及びこのための環境教育の振興に関する法律」というもの。環境教育は非常に幅が広く、環境教育の定義をはじめると5・6年かかる。とりあえず、環境保全という限定的な範囲で小船を出し、トータルな環境教育に関しては、もう一度原点から考え直し超党派で大きな船で漕ぎ出したい。
•田端正弘衆議院議員(公明党)
22日に自民党案が固まれば与党案もかたまるだろう。まさにヤマ場に差し掛かっている。内容については、皆さんのご要望にできるだけ沿うようにしたい。2000年循環型社会形成推進基本法を与党合意で成立させ、その大きな流れとして環境教育の推進がある。また、京都議定書を達成するためにも環境教育の重要性は再認識している。さらに、ヨハネスブルグサミット『教育の10年』の流れもあり、日本もその国内法としてこれを成立させないといけない。中身についてはこれからも議論したいが、現場の自主的な行動が損なわれないようにその点は担保したい。
•入沢肇参議院議員(保守新党)
現在の名称は限定的である。環境教育は幅が広く学校教育との関係で限定的になっているのだと思うが、こだわることはないと思う。加えて、単なる計画法では無意味で中身のある法律にしたい。特に学校教育に関しては学校教育の理念を推進するような内容にしたい。文部科学省は10年かかるというが、環境教育の教員免許をつくるなど法律の附則に入れると普及推進の核ができるのではないか。法律には核になるものを入れ、皆が「実践」しなければ意味がない。
•福山参議院議員(民主党)
民主党は、この2月に既に『環境教育振興法案』を参議院に提出しているが、これは環境文明21が作成した骨子案にかなり沿ったものになっている。内容については、法案を見ていただきたいが(民主党HP参照)、最低限のことをすべてのセクターでやられるよう、また国はおおまかな計画を作り、あとは地域が主体になる、というのがポイントである。今後出される与党案ともすり合わせをし、互いに協力して、議員立法として実現させたい。
【会場からの主な要望】
•NPO
専門学校は沢山あるが指導者が少ないので、指導者の育成を重点的にやってほしい。加えて、学校の先生がきちんと環境教育をできる体制作りをお願いしたい。
•高校理科教師
例えば、学校ぐるみで環境教育をスタートさせ成果があがっても、校長が変わり中心になっていた教師が転勤になると途端に中断し、知的財産が雲散霧消してしまう。法律があれば管理職が変わっても蓄積ができる。現状は、個人個人が奮闘している状態で、統一性、全体性、継続性に欠ける。国としてどのような理念で、どのような大枠でやるか示して欲しい。文科省に環境教育振興法を作れないかと持ちかけたところ、環境教育は教科ではないから法律は作れないとのことであった。それなら、教科にすればよい。既成概念を打破する横断的な取組が必要。10年かかるのなら法律を作って早く進めて欲しい。
•産廃処理・リサイクルの会社
リサイクルに良心的に努めれば努めるほど会社の経営は成り立たない。経済は大人の社会では重要であり、本音が出る。持続可能な社会のため、まず大人が変わらなければならない。形だけでは大人の社会は変わらない。大人が変わるような仕組み、対策が必要。
•全国小中学校環境教育研究会メンバー
上記の活動を30年やっている。当時の全国大会の参加者は50名、今は700名ほどになったが、全国で環境教育が進んでいるとはいえない。ぜひ、超党派で法律を作ってほしい。
•大学教員
長年環境教育に携わっているが、国民の精神性の低さを感じる。その原因は日本の自然文化を大事にしない、ものに対する思いがたりない、日本人であることをやめてしまったというように感じる。文明・文化の危機であり、環境教育はこれを立て直すものだ。文科省の指導要領には、一応各教科の中で環境教育に配慮せよ、とあるが、実際は行われない。学習指導要領の中に明確に位置づけない限り困難である。環境を学ぶことを保障し、日本の教育をいい方向にかえることが大切である。
•NPO
子どもにとって学びの場は学校だけではない。自然とふれあい合いながら学んでいるし、大人もそこで学んでいる。また、法律では、内容を決めるのでなく、自発的に活動できるようにしてほしい。さらに学校だけでなく、地域の資源も活用し推進してほしい。
•会社員
職場における環境教育の充実を期待する。職場では環境より経済優先になってしまっている。また、地域で勉強する場は意外と少なく、地域で環境教育を充実させてほしい。
•フリーの環境の先生
環境とはまわりのすべてであり、自然環境に限定してしまうと間違いが生じる。社会的要素も重要である。
•会社員
企業は社会的責任として環境について前向きな姿勢を示さなければならない。そうしたことを後押しする・推進する仕組みが必要。
•NPO
学校で話をさせてもらうには先生の信用を得る必要がある。学校に入れる仕組みがほしい。また、省エネ講座をしている半面、文科省が全国の学校にクーラーを入れるなど、矛盾する取組があるので、環境省と文部科学省の連携が必要。
こうした要望の後、事務局が準備した要望書を出席者一同で採択し、緊急集会は終了しました。なお、要望書は22日に全国会議員に提出しました。
要 望 書
21世紀 私たちが目指すべき社会は 「環境」「経済」「人間・社会」のバランスが取れた持続可能な循環社会であり その社会の基盤となる「ひと」を育てる環境教育・環境学習は 最も基本的かつ重要な課題です。
環境教育・環境学習は これまでも各主体ごとに取組が進められてきましたが 残念ながら 社会全体でみればとても不十分な状況にあり このままでは 国民の理解と協力のもとに 有効な環境政策を展開することは困難と思われます。
本日開かれた「環境教育・環境学習推進法をつくろう!緊急集会」において 私たちは 持続可能な社会に向けた環境教育・環境学習が 家庭 地域 学校 職場など社会の全ての主体で推進されるよう 特に次の点を国会にお願いすることに致しました。
- 私たちが生きているこの社会を 持続可能な社会にするには 個人のライフスタイルや価値観の転換 経済活動や政策のグリーン化などが不可欠であることから これらを促すような幅広い視点からの環境教育・環境学習推進のための法的枠組みをつくること。
- 環境教育・環境学習の推進のための法的枠組みとして 次の点を確保すること。
- (1)国及び都道府県は 環境教育・環境学習推進に関する横断的な組織の整備と実効性ある推進計画を策定すること。
- (2)国は 学習指導要領に「環境教育」を教科として明確に位置づけるとともに 学校教育における環境教育を充実させるために 特に大学の教員養成課程等での環境教育の履修を必修とするなど 教員の養成を図ること。
- (3)国は 各主体における環境教育・環境学習を充実させるために 専門家等の育成を進めること。
- (4)国及び都道府県は 各主体における環境教育・環境学習を充実させるために 人材育成や情報提供の拡充などの施策・措置もあわせて実施すること。
- (5)市町村は 住民に対して 等しく環境教育・環境学習の機会を提供すること。
- (6)事業者は 従業員に対して 環境教育・環境学習の機会を提供すること。
- 国及び地方公共団体は 環境教育・環境学習を推進するに当たっては これまで環境教育・環境学習の推進を支えてきた個人やNGO・NPO等民間団体との連携を重視すること。
- 環境教育・環境学習の推進のための法律は 制定・施行後の各主体の取組の進展や新たなニーズ等を踏まえ 定期的に見直しをし 必要な改定が行われるよう 柔軟性を持たせること。
平成15年4月17日
環境教育 環境学習推進法をつくろう!推進協議会 緊急集会
国会議員各位