「私たちの訴え」の背後にあるファクト
1.日本の衰退を示す様々な兆候
- ① 人口減少・少子化
- 2021年の日本人の出生数は81万人余(過去最少)。合計特殊出生率は1.30で、6年連続減少。その一方で、死亡数は戦後最多の約144万人余であるので、年間のネット人口減は約63万人余。
- ② 増大する未婚率
- 50歳までに一度も結婚していない生涯未婚率は、男性28.3%、女性17.8%(20年)で、増大する一方。21年の婚姻数は50万余で減少傾向。
- ③ 労働生産性、国際競争力
- 日本人の一人当たりの労働生産性(20年)は、OECD加盟国38ヵ国中28位(ちなみに米 3位、仏 8位、独 15位、英 19位、韓 24位)。また、スイスの国際経営開発研究所の「国際競争力ランキング」(22年)では、日本は34位(ちなみにシンガポール 3位、台湾 7位、米 10位、独 15位、英 23位、韓 27位、仏 28位)。
- ④ 女性差別
- 「世界経済フォーラム」のジェンダー・ギャップ ランキング(22年)では、146ヵ国中、日本は116位(ちなみに、独 10位、仏 15位、英 22位、米 27位、韓 99位、中 102位)。英エコノミスト誌の主要企業の女性役員比率(21年)では、日本は289位(ちなみに仏 7位、英 17位、独 18位、米 20位)。
- ⑤ 幸福度
- 国連の「世界幸福度」ランキング(21年)では、日本は56位(ちなみに 独 13位、英 17位、米 9位、仏 21位)。
- ⑥ 若者の意識
- 日本財団が22年に6ヵ国(日、米、英、中、韓、印)で各国1000人の若者(17-19歳の男女)を対象に実施した調査において、「自分は責任ある社会の一員だと思う」、「自分の行動で国や社会を変えられると思う」、「国や社会に役立つことをしたいと思う」、「ボランティア活動に参加したいと思う」、「政治や選挙、社会問題について自分の考えを持っている」のすべての重要項目において、日本の若者は最下位(6位)。
2.衰退に至る経緯
- 第二次世界大戦後から1990年頃までは、科学技術を伸ばしながら国土の改変と都市への人口集中を促し、重化学工業や電子・機械工業を中心に日本は国力を伸張、世界も驚くほどの経済成長を遂げ、OECDへの加盟など先進国の一員として大きく発展した。しかしその反面、深刻な環境破壊や大都市・地方都市間の格差、さらに家庭や地域・学校の教育力の低下をもたらした。
- 1960年末から80年代にかけて、一大経済発展の代償として発生した各種の環境・エネルギー問題(公害、国土の改変に伴う自然生態系の破壊や石油危機など)が発生したが、日本は対策を真剣に講じ、特に公害対策、省エネなどにおいて顕著な成果を挙げた。
- しかし、今世紀に入っては、政府の環境対策へのプライオリティが低下したことや、かつての成功体験に安んじて技術と次世代の産業の発展を促す努力を怠った事などが重なり、人口政策、産業政策も含め、国家として持続可能な未来を形成することにも後れを取ってしまい、日本は「先進国」なのかという疑念も生じている。
- 21世紀の今日、戦後の奇跡をもたらした日本の“得意技”の多くは、競争力を失いつつある。今後、日本が稼げる産業力は何かについて、未だ混沌としており、日本の将来、即ち青少年たちの未来についての確たる見取り図はできていないように見える。