2005年2月号会報 巻頭言「風」より

憲法にもうひとつの柱を

藤村 コノヱ


昨年7月に立ち上げられた憲法部会では、約半年に渡り「憲法に環境条項を」をテーマに検討を重ねてきましたが、去る1月13日、環境文明21の一次案として、記者発表することができました。当日は部会メンバー、特に加藤代表の意気込み(自ら案内の電話やFAXにおおわらわでした)が通じたのか、マスコミを中心に約60名の参加があり、内容説明の後、活発な意見交換も行なわれました。

ところで代表はかねてより「憲法に環境を」と会報にも度々書いてきましたが、正直言って私自身はあまり関心がありませんでした。というより、日常生活の中で憲法を意識することは殆どありませんでしたし、イラクの自衛隊派遣に伴う9条問題や子ども達の惨憺たる現状を招いている教育問題など、もっと差し迫った重要課題があるのではないかという思いが強かったからです。それに憲法に環境が入って何が変わるのかも疑問でした。

そんな思いを持ちつつ参加した部会活動でしたが、徐々に面白くなってきました。一つには主要メンバーの多くが戦争体験を持ち高度成長期を生きた方々で、人生の先輩たちの戦争や公害に対する様々な思いを垣間見ることができたこと。もう一つは憲法に持続性の概念を入れることが、結局は平和の問題や教育問題の解決の糸口になると私自身思えるようになったからです。

改めて読み返してみると、確かに現行憲法は主権在民、戦争の放棄、基本的人権の尊重が原則とされ、生命の基盤である環境を保全するという発想は全く入っていません。環境は良くて当たり前の時代で、そんなことより敗戦からの復興が何より重要な時代だったのですから、それも仕方ありません。しかし温暖化を始めとする様々な環境問題が私たち人間の生存さえも脅かす時代になり、加えて、経済そして人間や社会もこの先どうなるのか全く予測のつかない不安な時代にあって、私たち国民の進むべき道を示すはずの憲法の中に「持続的に安定した社会をつくろう」というメッセージがないのはおかしなことです。

そこで私たちは現行憲法の前文に「持続性」の概念を加えるとともに、これを担保する柱として三原則に加えて「環境」の柱を入れようと提案したわけです。「持続性」の概念が憲法で明らかになれば、環境を享受する権利(環境権)だけでなく、これを守り引き継ぐ責務が発生しますし、最大の環境破壊といわれる戦争などはもってのほかということになります。また長持ちする社会の基盤は「人」ですから教育も当然見直されるでしょうし、経済も長持ちする経済への転換が図られるはずです。

要は「長持ちする社会を皆で作っていこう」という明確なメッセージがあれば、そのための智恵も努力も生まれるはずだというのが私たちの考えのベースです。

とはいえ、「環境」さえも毛嫌いする人が多いのに、「憲法」といったらなおさらです。特に女性や若い人は「固い」議論は好みません。しかし、日本の進むべき方向や一番大切なものは何かを議論する中で私自身少しずつ変わったように、こうした提案をきっかけに、老若男女を問わず皆が環境のことを、進むべき道を考えてくれるようになれば、日本も少しはいい方向に向かうのではないでしょうか。そんな期待を持ちながら、これから本格的に社会に向けて発信していきますので、皆様も是非議論の輪に加わってください。

なお、9条に関しては、当初、部会内でも様々な意見が出されました。しかし、私たちは、環境は最も根源的な問題であるという考えから、9条問題とは引き離して、国会で速やかに審議されることを要請しています。

以下に私たちの提案を示します。