2023年11月号会報 巻頭言「風」より

環境文明21の30年の振り返りとこれから

藤村 コノヱ


今年9月で満30周年を迎えた当会。30年の社会変化については、前号と今月号で各分野の方にご執筆頂いたので、ここでは、当会の30年を振り返ってみます。

◆設立からの10年(1993~2003年)

加藤顧問はじめ設立メンバー5名で、会の目的や方針、活動内容など議論した2泊3日の熱海合宿の1週間後の9月1日、「21世紀の環境と文明を考える会」は発足しました。設立直後から、環境に関する最先端の考え方を伝える会報発行をはじめ、環境倫理部会など部会を立ち上げました。さらに全国各地でのワークショップで会員拡大に努めるとともに、日米合同研究や合同セミナー、ドイツ・スウェーデン・アメリカ等でのNGO調査など海外NGOとも意見交換し、循環社会の姿やNGO組織の在り方を模索する期間でした。また環境教育等促進法や飲料自販機モデル条例などの政策提言や、京都議定書発効を求めた緊急アクションなど対外的活動を活発に行った期間でした。

◆その後の10年(2004~2013年)

憲法に環境条項を入れる提案、グリーン経済、日本の持続性の知恵など新たなテーマも加わり、前10年に引き続き、全国各地でシンポジウム・ワークショップを開催し、日米合同セミナーやスウェーデンでの学識者・NGOとの意見交換会など海外交流も続けました。またそれまでの調査研究をまとめて『環境の思想』として出版、それをベースに「環境文明社会」の探求を深める活動も始めました。今も続く経営者「環境力」大賞事業もこの時期から開始。後半は東日本大震災の復興支援のための環境講座を仙台市と陸前高田市で行ったほか、グリーン連合成立のきっかけとなった環境NPOのエンパワーメント戦略2020の検討も開始しました。

◆さらにその後の10年(2013~2023年)

2013年3月に認定NPOとなり、活動目標の一つである環境NPOが活躍できる市民社会の強化を目指してシンポジウムなどで本格的議論を展開、正式に発足したグリーン連合活動も積極的に行いました。また、成立以来の課題である気候変動問題がますます深刻化したことから、関連会合を地域の方や学生も巻き込むなどして頻繁に開催し、世の中の機運を高めることに努めました。この間、事務局規模も縮小しスタッフも大幅に交代。2018年6月には加藤さんとの共同代表から私が代表となり、25周年の折に頂いた環境文明21への期待をどう実現していくか、次世代にどう継承していくかをより深く考えるようになりました。特に、後半はコロナの影響で活動範囲が限定され、対外的な活動が行えず停滞感を感じることもありました。しかし、Webを活かした環文ミニセミナーなど新たな事業も始まり、少しずつ、対外的な活動も元に戻りつつあるのが現在です。


以上、30年の主だった活動ですが、その間に成し得たことも、道半ばのこともあります。

◆継続してきたこと

一つ目は会報を設立以来一度も休むことなく毎月発行し、当初の目的通り、最先端の考え方を伝え続けたことです。1か月はあっという間でテーマや執筆者選びと依頼は結構大変でしたが、多くの方のご協力で「正しいことを信念をもって言い続ける」ことはできたと自負しています。特に最近の政府の環境・エネルギー政策は目に余るものがありますが、それに対しても臆することなく、私たちが正しいと考える情報を発信。これが当会の強みであり、今後も継続したい大きな活動です。

二つ目は人材育成です。損保環境財団からのインターン生二十数名を受け入れたほか、企業研修や市民教育で多くの人と出会い、特に長期間関わった人たちとは、環境に関わることだけでなく、人生や社会の在り様についても語り合い議論もしました。その後の彼らを見ていると、私たちの活動や思いが、彼らの人生にわずかでも影響を与えられたのでは、と思いますし、彼らの今後に大きな期待も寄せています。

三つ目は、当会の全ての活動基盤となり、環境問題や持続可能な社会の基盤となる環境倫理について、設立以来、会員の皆さんと共に継続的に議論と提案を重ねてきたことも、個別分野で活動する団体が多い中で、当会は文明のあり方について議論する唯一の存在です。そしてそれができたのも、その意義を認め支援して下さる会員の皆さんのお陰です。

◆出来ていないこと

環境問題は文明の問題としてスタートした当会ですが、残念ながら、人々の価値観や制度・政策を変えることも、NPO/NGOが社会の一翼を担う市民社会をつくることも、全く道半ばです。前述したように、会として様々な活動を通じて文明の転換期にあることを伝え、私自身もグリーン連合の活動や審議会でも環境政策の多様性と実効性のためにはNPO/NGOが不可欠なことを強く訴えてきました。しかし、課題が山積し情報があふれる現代社会の中で、市民の関心も多様化し、欧米ほどの市民の理解もサポートも得られていません。また環境問題や市民社会の重要性に対する政治家や官僚の認識は以前にもまして低下し、環境政策のみならず、市民社会に対する政策も欧米に大きく後れを取っているのが30年前と変わらぬ日本の現状です。

そうした中で、他の環境NPO同様に、当会の会員数も減少し、高齢化も進んでいます。それでも、社会全体が破綻することのないよう、引き続き、当会の強みを生かしつつ役割を果たしていきたいと願っていますので、会員お一人おひとりも、可能な範囲で、当会の主張を多くの方に伝えて頂き、組織の強化にもご協力頂きたいと心から願っています。