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5.様々なインフラ・ライフライン等への影響
(森谷 賢)
5-1. 現在の状況(工業化以前から約1℃上昇)
近年、国内各地で、大雨、台風等による各種インフラ・ライフラインへの影響が生じており、特に鉄道、道路の被害、それに伴う孤立集落の発生、電気・水道、通信、廃棄物処理のライフラインへの障害が発生している。この障害により一時数十万戸に停電や断水の被害が出るケースが複数生じているほか、水道インフラでは、取水制限の実施などの渇水被害が全国各地で発生している。主な事例等をインフラの種類ごとに述べる。
【鉄道】
【道路】
【電力】
【水道】
【通信】
【廃棄物処理】
5-2. 将来予測(工業化以前から約1.5~2℃上昇時、または約3~4℃上昇時)
将来現状より更に気温が上昇した場合、気候変動による豪雨の頻発化と激甚化により、斜面崩壊に伴う道路途絶を通じて孤立地域の発生可能性が増加すると予測されている。鉄道ネットワークにおける水害リスクは、SSP5-8.5シナリオ(注5)では21世紀末におけるリスクが基準気候と比較して最大で約1.37倍に増加し、特に、主要都市間を結ぶ幹線路線や新幹線でリスクが顕著に増加することが予測されている。
道路のメンテナンス、改修、復旧に必要な費用が増加することが予測されている。また、極端な降雨による鉄道の軌道への影響、洪水・土砂災害による道路網への影響、鉄道輸送の安定性への影響が予測されている。電力インフラに関して、台風や海面水位の上昇等による発電施設への直接的被害や冷却水として利用する海水温上昇による発電出力の低下等の影響が予測されている。その他、水道インフラでは河川の微細浮遊土砂の増加による水質管理への影響、気候変動に伴う降水パターンの変化や積雪量の減少、融雪時期の早期化等により渇水が頻発化、長期化、深刻化すること等、渇水被害のさらなる拡大や、気象災害による廃棄物の適正処理への影響洪水氾濫による水害廃棄物の発生等も予測されている。
注釈
(注1)上下水道 災害にどう備えるか NHK時論公論、2026年9月1日
(注2)河川整備基本方針の変更の考え方についてhttps://www.mlit.go.jp/river/shinngikai_blog/shaseishin/kasenbunkakai/shouiinkai/kihonhoushin/dai126kai/03_siryou1.pdf
(注3)気候変動を踏まえた治水計画のあり方 提言 改訂版https://www.mlit.go.jp/river/shinngikai_blog/chisui_kentoukai/index.html
(注4)気候変動を踏まえた下水道による都市浸水対策の推進について 提言 https://www.mlit.go.jp/mizukokudo/sewerage/content/001402868.pdf
(注5)SSP5-8.5シナリオとは、化石燃料依存型の発展の下で気候政策を導入しないシナリオ。
このシナリオでは2050年までにCO2排出量が現在の2倍に。これに近いRCPシナリオはRCP8.5。
なお、見出しの工業化以前からの気温上昇幅(約1℃、約1.5~2℃または約3~4℃)は、1850~1900年を基準とした世界平均気温上昇幅であり、日本域における気温上昇幅とは必ずしも一致しないことに留意が必要である。現状気温上昇幅は、IPCC第6次評価報告書の記載に基づく。