【学校教育の事例】京都府のある中学校の事例
◆概要
中学校社会科(地理的分野)を中心とした、「森林」を軸教材とした授業。森林を軸教材として、環境教育カリキュラムを組み、社会科(地理的分野)を中心に、理科、技術・家庭科との連携により、学習を深める。
森林を軸教材とした環境教育は、小学校からの展開が以下のように示されている。
- ○第4学年:地域の環境の質や自分の生活と森林の関わり(まちの緑調べ、並木調べ)
- ○第5学年:国土としての森林、(生産・環境・文化)資源としての森林
- ○第6学年:歴史的な森林と人々との関わり(風土、木材、管理・利用の対象、環境、伝統、文化、商業)
中学校において、「森林」を軸教材とすることの意義は次の3点として指摘されている。
- 1) 森林を通して、子どもたち自身と環境との距離感を問い直すことができる。
- 2) 森林を通して、環境と文化の関係を問い直すことができる。
- 3) 森林を通して、環境についてのステレオタイプな思いこみを問い直すことができる。
◆学習の展開
社会科、理科、技術・家庭科によるクロスカリキュラムによって、第1学年、第2学年の2年間をかけて学習をする。本教材では、「東南アジアにおける熱帯林の減少」「紀伊山地 (吉野)の林業」「白神山地の自然保護」の3つの題材を設定して学習を進める。
この3つの題材のもと、以下に示した学習課題について学習する。
- 熱帯林はどのような森林なのだろう
- マレーシアでは、なぜ熱帯林が減少したのだろう
- 熱帯林の開発をめぐってどのような対立があるのだろう
- イギリスの少年を支持すべきか、マハティール首相を支持 すべきか話し合おう
- 吉野杉の杉材としての特徴は何だろう
- 吉野杉はどのように育てられているのだろう
- 吉野の林業が不振に喘いでいると言われるのはなぜだろう
- 白神山地はなぜ世界遺産に選ばれたのだろう
- 白神山地の入山規制をめぐってなぜ対立が起こるのだろう
- 青森県側の考えを支持するべきか、秋田県側を支持するべきか話し合おう
- マレーシアの事例と白神山地の事例における対立の共通点と相違点を探そう
- 森林に関する3つの授業に共通するキーワードを作ろう
以上の3つの題材に対して、生徒は合計で20項目の結果や考察をまとめ、それぞれの題材に関する学習をまとめ上げた。
◆学習の成果
- 1) 包括的環境をとらえる視点を生理・設定することができた。
- 2) 中学校の社会科、理科、技術・家庭科の授業をクロスさせることの意義を明らかにできた。
- 3) 社会科地理的分野を中心とした「森林」の展開案を示すことができた。