【学校教育の事例】宮城県のある高校の事例
◆概要
1年次に「森は海の恋人」という、本吉地方をよく知り郷土愛を育むための科目がある。2年次で行われるのがこの科目で、内容は環境概論的なものである。興味のある生徒には、専門の選択科目も準備されているので、この科目では細部にこだわらずに大きな視点で、環境の成り立ち、環境問題の構造を論じている。そのため、本科目の目標は「環境や環境問題に対する興味や関心を育み,環境・環境問題を総体として捉える態度を身に付け、21世紀を主体的に生きる責任ある人間としての自覚と資質を養う」としている。
同時に体験学習を通して、心で感じて次の行動が出るようにするため、隔週土曜日の登校日には、次のような環境教育のための体験学習が準備されている。
- 1) 自然体験
- 2) 異文化体験
- 3) 伝統文化体験
◆内容
- (1)Introduction
先人の遺した芸術作品を鑑賞しながら,人間の自然に対する考え方、付き合い方について考察させる。「バベルの塔」「沈黙の春」など - (2)環境破壊とは何か? ~自然界における循環の重要性~
自然界・社会における循環とその多様性の重要性を理解させる。またその一部が正常に機能しないことが環境破壊であることを理解させる。資源の導入(入力)、廃物と廃熱の廃棄(出力)、物質の循環(循環)、養分の循環、新しい自然循環の獲得(生態系の遷移)、需要と供給の関係による社会の物質循環、社会の循環と自然循環の繋がり - (3)環境問題の紹介
数多くある環境問題の中で例にとって、環境問題の構造を本質的に理解させる。 - ア)地球温暖化
メカニズム、影響、対策、CO2排出量削減の具体策、地球温暖化議論の問題点 - イ)ゴミ問題
ゴミ問題とは、資本主義の欠陥 需要創造活動、ゴミを処理する工夫 - (4)環境問題が生じた理由とこれほどまでに深刻になった理由
環境問題発生の原因を,具体的かつ本質的に段階を踏んで理解させる。また、それに伴って、環境問題の背景にある環境的不公正について理解させる。 - (5)なかなか解決できない理由
社会における各利益団体の利害の衝突しやすいシステムと、人間の弱さに原因があることを理解させる。 - ア)環境倫理学の3つの主張
- イ)社会的ジレンマ
- a)共有地の悲劇
- b)社会的ジレンマとしての環境問題
- ウ)自由主義・民主主義とその限界
- (6)これからどうすべきか
21世紀を主体的に責任を持って生きるためにどのような態度が必要か考察させる。 - ア)無痛文明論
- イ)配分・選択の原理~公正・公平・平等とは何か~
- ウ)コミュニケーションについて~福祉の問題点~
- エ)政治・経済・法律・哲学そして宗教